47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査 有識者コメント

有識者コメント全員まとめ

2020年11月18日、47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査 を公表します。それに伴い、有識者、選択的夫婦別姓裁判関係者、アクティビストたちが調査レポートを受けてコメントを寄せてくださいましたのでご紹介します。

47都道府県調査ページへのリンク

  1. 別姓が選べないことによる「結婚のあきらめ」20代男性で2.5%は衝撃
    1. 棚村 政行氏 早稲田大学法学学術院教授(家族法)
  2. 政府の「世論が拮抗している」は事実に反することをより明確に示した調査
    1. 二宮 周平氏 立命館大学法学部教授(家族法)
  3. 内閣府調査より、選択制への賛否がわかりやすい調査
    1. 榊原 富士子氏 第二次夫婦別姓訴訟弁護団長
  4. 「価値観が違う人たちの両方ともが幸せになれる」シンプルな考え方が浸透してきた現れ
    1. 青野 慶久氏 サイボウズ株式会社 代表取締役社長/ニュー選択的夫婦別姓訴訟原告
  5. 賛否双方がオープンな形で議論し合うために、まず民法改正法案の提出を
    1. 小池 信行氏 弁護士、元法務省⺠事局参事官/のちに法務省大臣官房審議官、東京高裁判事
  6. 日本政府が繰り返し受けている国連の法改正勧告に国際社会が注目
    1. 林 陽子氏 弁護士、元国連女性差別撤廃委員会委員長
  7. 婚姻の自由の侵害は個別事情にとどまらず、全国的な問題だと示した調査
    1. 沼崎 一郎氏 東北大学大学院文学研究科教授(文化人類学)
  8. 圧倒的多数の賛意。社会の実像に政治が向き合う必要性を明確に示した調査
    1. 三浦 まり氏 上智大学法学部教授
  9. 7割以上が40~50代にもかかわらず賛成率70.6%。民意は明確に示された
    1. 野口 敏彦氏 選択的夫婦別姓訴訟弁護団事務局長
  10. 「別姓」ではなく「選択制」への賛否を問う自他の区別をつけた質問を評価
    1. 恩地 いづみ氏 第二次選択的夫婦別姓訴訟原告
  11. 母数7,000人は国の世論調査より多く、男女差、地域差、経年変化を反映
    1. 山崎 精一氏 第二次選択的夫婦別姓訴訟原告
  12. 若者の意見受け止め、選択的夫婦別姓制度を導入することを国に期待
    1. 櫻井 彩乃氏 #男女共同参画ってなんですか代表
  13. 「20〜30代女性8割以上賛成」を無視するなら、政治はどこを見ているのか
    1. 能條 桃子氏 慶応義塾大学経済学部4年/一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事
  14. 全国どこでも、反対者の2倍~10倍が賛成している。早急に民法改正を!
    1. 大澤 容子氏 mネット・民法改正情報ネットワーク 理事
  15. 当事者が望むのは「夫婦別姓強制」ではなく「選択制」だと示せた調査
    1. 小国 香織氏 第一次選択的夫婦別姓訴訟原告
  16. 名字を変えたくないのは「女のわがまま」ではない。「選択肢の自由」を全てのひとへ
    1. 山本 和奈氏  一般社団法人Voice Up Japan 代表理事

別姓が選べないことによる「結婚のあきらめ」20代男性で2.5%は衝撃

棚村 政行氏 早稲田大学法学学術院教授(家族法)

棚村政行教授(早稲田大学)

2020年10月に、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションと早稲田大学棚村研究室で、全国47都道府県の20~59歳までの7000人に行ったインターネットモニター調査の結果、➀自分も同姓、他人も同姓とすべきと夫婦別姓選択制への反対は、14.4%にとどまり、②自分は同姓だが、他人はいずれでもかまわない(選択制賛成)35.9%、③自分は夫婦別姓、他人はいずれでもよい(選択制賛成・肯定)34.7%、④その他、わからないが15.0%との結果がでた。

おおまかにみると、賛成派が70.6%、反対派が14.4%であり、内閣府の調査等では、夫婦別姓選択制への賛成、反対を問うもので、自分は同姓をとるが、他の夫婦はかまわないという自他区別を鮮明にしようとした。もっとも、これを賛成・反対に厳密に色分けできるかの問題がないわけではない。しかし、これはかつて一部の新聞社(東京新聞など)が行った形式を採用したもので、他人は自由という人たちを反対に回す必要はないと採用してみた。

また、この調査では、別姓が選べず結婚を諦めたり、事実婚にとどまった人は、全体で1.3%もいて、とくに20代男性で2.5%もいたことに衝撃を受けた。選択的夫婦別姓の導入は、やはり男性にとっても大きな問題であり、結婚の権利が侵害されていることが明らかになった。世代格差、男女格差がみられ、若い人や女性は賛成が8割以上になっていること、地域格差が激しく、東京、沖縄、青森、和歌山などが賛成の割合、賛否倍率が高く、逆に、愛媛、山口、新潟、福島などは、比較的賛成の割合が低かったり、賛否倍率も低かったりした。全国での市区町村での選択的夫婦別姓への陳情は増加しており、若い人たちが身の回りの自治体への働きかけ、選挙での投票行動などで、はっきり意思表示をしていただけるとよいと思う。

いずれにしても、選択的夫婦別姓に賛成する人の割合が年々増えている。今回の調査でも、賛成が7割を超え、反対が14%であった。共働き夫婦が7割にも達し、多様性がますます進み、夫も家事・育児を平等に負担すべきだという賛成が8割以上にもなっている。グローバル化やICT化も著しく進展し、日本の社会経済の実態と人々の意識は、これまでと比べて確実に変化しつつある。夫婦別姓や女性登用などが社会の大きな変革のためのかなめというべきであり、日本が一億総活躍社会、女性活躍加速を掲げるのであれば、働きやすい、生きやすい環境を整備して、男女共同参画・共生社会と両立支援を実現すべきであり、そのためにも、選択的夫婦別姓制度は早急に導入されなければならない。

政府の「世論が拮抗している」は事実に反することをより明確に示した調査

二宮 周平氏 立命館大学法学部教授(家族法)

二宮周平教授(立命館大学)

今回の調査の特徴は、①自分は夫婦同姓がよいし、他の夫婦も同性であるべきだ、②自分は夫婦同姓がよいが、他の夫婦は同性でも別姓でも構わない、③自分は夫婦別姓を選べるとよいが、他の夫婦は同性でも別姓でも構わない、という自他の区別をつけた設問にしたことです。その結果、①は14.4%、②③の合計は70.6%でした。何と7割の人が選択制を支持しています。賛否比率が全国最低の愛媛県でさえ、①は25.4%、②③の合計は59.7%、選択制の支持が反対の2.4倍もあります。

2017年の内閣府の世論調査は、①現行法維持、②選択制導入賛成、③通称使用制賛成の三択でした。今回と同じく50代以下にしぼると、①16.8%、②50.0%、③30.7%でした。③の選択肢がある分、②が減りますが、それでも①が10%台、②の割合は、女性、若い世代で高くなることは、今回の調査と共通します。

政府は、世論が拮抗していることを根拠に、選択制の導入に慎重であるべきと回答し続けていますが、まったく事実に反します。今回の調査は、そのことをより一層明確に示しました。

自由記述には、夫婦同姓が日本古来の伝統とする意見が多数見られました。これも事実に反します。庶民が苗字を名乗ることができたのは1870年からです。1898年、明治民法の制定により家族の基本は家にあるとし、戸主及び家族は家の氏を称するとされました。女性は婚姻して夫の家に入り、夫の家族となることから、その家の氏を称しました。家制度が結果として夫婦同姓をもたらしたのです。古来の伝統というのであれば、武士階級は夫婦別姓でした(源頼朝と北条政子)。
先日、大学の一般教育の授業で夫婦別姓を取り上げました。受講生の半数120名が任意にコメントを送信してくれました。全員が選択制支持でした。夫婦同姓がよいとする人も、選択制であれば、同姓を選べるからです。他者の選択を尊重する仕組みは、個人の自由の尊重につながると、制度の本質を見抜いています。夫婦同姓の強制によって夫婦・親子の一体性が維持されるといった類のコメントは皆無でした。学生はリアリストです。
立法作業は、事実と制度の本質に基づいてなされるべきではないでしょうか。

内閣府調査より、選択制への賛否がわかりやすい調査

榊原 富士子氏 第二次夫婦別姓訴訟弁護団長

榊原富士子弁護士

大変、興味深いアンケート結果です。

内閣府の世論調査では、1996(平8)年以降、「婚姻前の姓を通称としてどこでも使えるように法律を改める」という一見ソフト、実は内容が不明という選択肢がもうけられています。このため、別姓婚を認めることへの賛否割合が正確に把握しにくいです。実際、今年10月26日の広島高裁決定は、「通称の選択肢に賛成24.4%」(平成29年調査)を、選択的夫婦別氏制に賛成ではない意見と分類してしまっています。しかし、戸籍以外のどこでも使用できることを法律が認めるならば、その氏はすでに法律に根拠のある氏であり「通称」ではないのです(2つの氏をもつ混乱は続くかもしれませんが)。

今回のアンケートでは、「他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」と「他の夫婦も同姓であるべきだ」の2つのグループに分ければ、選択制への賛否がおおむね把握できます。全体では70.6%が賛成、婚姻改姓の主たる当事者である女性についてみれば80.2%が賛成、というのは、他の民間調査と乖離のない信用できる数値です。ちなみに、シンプルに選択的夫婦別姓制への賛否を聞く民間調査(2019年~2020年)では,朝日新聞調査69%,西日本新聞調査約80%,TOKYOFM調査82.9%であり、本調査と同様に賛成者が多数派です。

大変ですが、ぜひ実現するまで調査を続けてください。ゴールはそんなに遠くないと期待しています。

「価値観が違う人たちの両方ともが幸せになれる」シンプルな考え方が浸透してきた現れ

青野 慶久氏 サイボウズ株式会社 代表取締役社長/ニュー選択的夫婦別姓訴訟原告

青野慶久氏

アンケートのたびに賛成多数が明らかになってきましたね。結婚で名前を変えるか変えないか選択できるようにするのだから、価値観が違う人たちの両方ともが幸せになれる、というシンプルな考え方が浸透してきたことをうれしく思います。

活発に活動してくださるみなさまのおかげで、ようやく自民党の国会議員も重い腰を上げ、選択的夫婦別姓の実現に向けて動いているようです。ゴールは見えてきました。とは言え、まだまだ油断は禁物。実現するまでしっかりプレッシャーをかけていきましょう。

一つ加えるならば、私の地元、愛媛県の賛成比率の低さに愕然としました。自分の価値観を相手に押し付け、多様な個性を排除しようとする文化が根強いことが明らかになってしまいました。こんなことでは若者に不人気になってしまいますし、働き方の多様化も進まないでしょうし、移住者も受け入れられないでしょう。

愛媛県民のみなさん、頑張っていきましょう。

賛否双方がオープンな形で議論し合うために、まず民法改正法案の提出を

小池 信行氏 弁護士、元法務省⺠事局参事官/のちに法務省大臣官房審議官、東京高裁判事

小池信行氏

1996年の民法改正法案の立案に、法制審議会の幹事として関与していた小池です。

「調査報告書」によると、選択的夫婦別氏制の導入を求める方々の主張の根拠は、「自分らしく生きる」という、個人の尊厳に基礎を置く現代の人権思想に収斂してきているように思います。これは、この主張をさらに深化させ、強固にするものとして評価します。

一方で、「調査報告書」では、選択的夫婦別氏制の導入に賛成する方が多いようですが、これに内心反対ではあるがまだ声を挙げていないという方も多数おられるはずです。こうした方々から制度の必要性について理解を得るためには、双方の立場の人々がオープンな形で議論し合うことが必須と思われますが、これまでそのような機会が正式に設けられたことはありません。その最も望ましい議論の場が国会にほかなりません。そのためには、まず民法改正法案の提出に漕ぎつけるのが肝要です。

衆参両院の法務委員会での審議だけでなく、各地方で公聴会を開くことも必要でしょう。そうした広範な議論を通じて、反対をする方々からも、「それぞれの人がその人らしく生きるための選択肢として必要」という理解を得ることができるならば、スムースな制度導入が可能になると考えます。

日本政府が繰り返し受けている国連の法改正勧告に国際社会が注目

林 陽子氏 弁護士、元国連女性差別撤廃委員会委員長

林 陽子氏 弁護士、元国連女性差別撤廃委員会委員長

夫婦同氏を強制する法制度は世界でも稀なもので、日本政府は国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)から繰り返し法改正の勧告を受けています。特に2009年以降は各国の報告書審査後、CEDAWはその国にとって最重要な項目を「フォローアップ対象」として早期の改善を迫っていますが、日本の場合は選択的夫婦別姓をはじめとする家族法改正がフォローアップの対象です。

国際社会は日本がジェンダー平等に向けて変化していけるのか、それともこのまま低迷、埋没していくのか、注目しています。

婚姻の自由の侵害は個別事情にとどまらず、全国的な問題だと示した調査

沼崎 一郎氏 東北大学大学院文学研究科教授(文化人類学)

沼崎一郎教授(東北大学)

Q1について:最大の成果は、全体として、自分は同姓支持だが他人は別姓でも構わないという人が4割近いこと、そして同姓・別姓支持を問わず「他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」という回答が7割に達すること、つまり選択の自由を支持する人が大多数であると示した点。

しかし、だからといって、法改正支持が7割と解釈することには問題がある。第一に、法改正の是非を正面から問うていない。第二に、質問文の「結婚の際の姓のあり方」が戸籍姓を指すのか通称(呼称上の姓)を指すのかが不明であり、「他の夫婦が別姓でも構わない」が事実婚を指すのか、通称使用を指すのか、法改正後の戸籍上の別姓(別氏)を指すのか判断できない。自分は同姓支持だが「他の夫婦が別姓でも構わない」という意味が、他人の通称使用くらいならいいとか、他人が事実婚でも差別しないという程度の意味であって、法改正を支持するものではない可能性もある。したがって、この設問への回答を法改正への賛否と解釈するのは「深読み」ないし「偏った解釈」という批判を免れない。

また、Q1に「自分は夫婦別姓がよい。他の夫婦も別姓であるべきだ。」という選択肢が抜けている。そのため、別姓支持者における同姓完全否定派の比率が不明。この選択肢が入っていれば、その数値次第で、別姓支持者はほとんど同姓・別姓の選択支持で他人に別姓を強制するつもりはないということが明白に示せたはず。惜しかった!

Q3について:「結婚を諦めた/事実婚にした人」の割合の可視化に成功している。1.3%とはいえ、「ある」回答のほぼ全国的存在は、現行民法が婚姻の自由を広範に侵害している統計的な根拠となる。婚姻の自由の侵害は一部訴訟で原告が主張してきたことだが、これが個別事情にとどまらず全国的な問題であることを、この調査は示している。また、「ある」and/or「答えたくない」回答が比較的多い県が日本海側に集中しているというデータは興味深い。「答えたくない」回答の比率が、九州で熊本県のみ高いことも興味深い。「答えたくない」理由が不明なので、何とも言えないが、この回答も現行法制が何らかの不都合を生じていることを示唆している可能性がある。個別回答のより詳細な分析が可能なら是非やってほしい。また、「ある」and/or「答えたくない」回答の多い県について、その地方特有の問題があるのかどうか、さらなる調査が求められる。

圧倒的多数の賛意。社会の実像に政治が向き合う必要性を明確に示した調査

三浦 まり氏 上智大学法学部教授

三浦まり教授(上智大学)

選択的夫婦別姓に対して圧倒的多くの人が賛成していることが示された貴重な調査結果だったと思います。自分は夫婦同姓がいいが、他の夫婦は別姓でも構わないという選択肢があることで、より正確に世論の動向を推し量る調査となっています。また、賛否には男女、世代、地域によって大きな違いがあることも可視化されました。

興味深かったのは、選択的夫婦別姓に賛成する人の中での内訳に男女差が見られた点です。女性の方が「自分は同姓がよいが、他の夫婦には干渉しない」という傾向が男性よりも見られ、男性は「自分は同姓がよい」とは言わず、「自分は別姓が選べるとよい」と答える傾向が女性よりも高く出ていました。男性で別姓に反対する人の中から、自分は同姓がいいが他の夫婦にまで押し付けないと考える人が、今後どのくらい増えるのかに注目したいと思います。

その意味で、反対している人の理由を見ることは重要です。自由記述では、「家族としての一体感・絆」「家族として認知される」を挙げる人が多く、また「子供が悩む」ことが続いて多く出ていました。別姓の家族が絆を強く保っていることや、子供が悩んでいるわけではないことがもっと示されると、社会的合意形成が進むのではないかと思います。

この調査は、社会の実像に政治が向き合う必要性を明確に示しています。国会が迅速に動くことを期待します。

7割以上が40~50代にもかかわらず賛成率70.6%。民意は明確に示された

野口 敏彦氏 選択的夫婦別姓訴訟弁護団事務局長

野口敏彦弁護士

まずは,全体の賛成率が70.6%(反対14.4%)ということで,選択的夫婦別姓に対する民意は,このアンケートで明確に示されたと考えています。特に,このアンケートでは回答者の7割以上が40~50代であり,年齢が高い回答者の方が反対率が高い傾向があるにもかかわらずこの結果が示されたということに,特に注目すべきだと思います。また,男女平等の観点からも,少子高齢化の観点からも,女性全体の賛成率(特に20代~30代の女性の賛成率)が8割を超えていることは極めて重要であり,何よりも優先されなければならない点だと思います。

この選択的夫婦別姓の問題は人権の問題であるため,世論の動向にかかわらず,早期に実現されていなければなかった問題であると考えますが,今回,選択的夫婦別姓の実現を希望される当事者の皆さんが自分たちでアクションを起こし,国民の具体的な声を可視化して下さったことは,日本の政治史的にも極めて大きな意味があるだろうと考えています。これを契機に,女性や若年層の皆さんが気軽に「自信を持って」政治的な声を上げられる文化が日本に根付いていくことを,心から願っています。

また,司法の観点からも,日本の裁判所は政治的な問題になると徹底的に判断を回避する「司法消極主義」の立場を長く貫いてきたと思いますが,女性や若年層の皆さんが声を上げ,政治が動き出すことによって,裁判官もようやく,真に憲法の趣旨に沿った(おそらくは裁判官自身の本心にも即した)判決を「自信を持って」下すことができるようになるのではないかと考えています。

今回のこのアンケート結果は,現在係属中の選択的夫婦別姓訴訟においても,立法事実の変化を示す証拠として提出させて頂きます。現在,弁護団はちょうど上告理由書の作成に全力を注いでいるところであり,このタイミングでこのアンケート結果が得られたことを本当に幸運に思います。陳情アクションの皆さんの活動に,心から敬意を表します。

「別姓」ではなく「選択制」への賛否を問う自他の区別をつけた質問を評価

恩地 いづみ氏 第二次選択的夫婦別姓訴訟原告

恩地いづみ氏

<当事者は選択制を支持しています>
20代から50代で70.6%が容認、は嬉しい追い風です。
結婚当事者になる可能性がより高い年齢層で、地域差、男女差、年齢差があるとはいえ7割は別姓を選べることを支持しています。時代はどんどん前に進んでいます。
国はいつまで「国民の間にいろいろな意見がある」と言い続けるのでしょうか。もう、そろそろ潮時ですよ。

<質問項目、別姓に賛成か反対かを問うてはいけないんですよ>
別姓に賛成か、反対か、と聞くと自分がどうしたいかを答えに混入する人が出ます。内閣府世論調査の質問には、「どこでも使える通称使用できるよう法改正することに賛成」という紛らわしく回答者が正確に理解して回答するのが難しい項目が入っています。
他人の結婚に同姓を強制するか、よそのカップルが同姓でも別姓でもいいかが問題なのです。今回のアンケートはそこのところをきちんと質問項目にしているので分かりやすいと思いました。

<反対のご意見では>
①同姓に一体感やけじめ、②伝統・文化である、③子どもの姓で悩む・子どもが困る。というのがトップスリーでした。何かを変えよう、というとき不安が伴うのはありえること。すでに旧姓併記で増えている通称別姓夫婦の存在は、別姓で家族のきずなに不安がないことや伝統や文化といっても同姓強制が必須とはいえない証明になると思います。子どもたちの問題も、国際結婚や事実婚家庭の子どもたちからの声では特に問題は上がっていませんし日本以外の国で別姓が選べるようになっていて子どもに問題があるという報告はありません。

不安を放置するのではなく、法務省や男女共同参画局などは上記のような実情も踏まえ「名前を変えないことも選べる制度」という選択制の趣旨への理解を求める広報をなさったらいかがでしょうか。国がなすべき少数者への差別をなくす取り組みの一環になると思います。

<「選択的夫婦別姓」に国会流行語大賞を>
私は今国会で「選択的夫婦別姓」に「国会流行語大賞」をあげたくなりました。与野党問わず質問する方質問する方、言及されていましたし、男女共同参画相の橋本聖子大臣も取りまとめに向け議論を、と前向きな答弁をされていました。
同姓でなければ結婚できない、ではなく、名前を変えたくない二人でもあたり前に法律婚ができるようになれば、喜ぶ人が増えるだけ。選択的夫婦別姓へ、今こそ法改正へGO!をお願いしたいと思います。

母数7,000人は国の世論調査より多く、男女差、地域差、経年変化を反映

山崎 精一氏 第二次選択的夫婦別姓訴訟原告

山崎精一氏

第二次選択的夫婦別姓訴訟の東京地裁立川支部での原告6人の内の一人、山崎精一です。

今年の10月23日に東京高裁は私たちの控訴を棄却しました。その判決の中で「平成29年世論調査の時点において、いまだ選択的夫婦別氏制を導入すべきとの意見が大勢を占めているとは認められず」と述べています。これは内閣府の「家族の法制に関する世論調査」を取り上げ、夫婦同姓であるべきという人の割合29.3%と夫婦同姓であるべきだが通称使用を認めても構わないという割合24.4%を足すと53.7%になり、夫婦別姓を認めても構わないという割合42.5%を越えている、と主張しているのです。
しかし、希望する人には夫婦別姓を認めることに賛成か反対を聞けばよいのに、この調査は婚姻前の姓の通称使用という第三の選択肢を加えることによって民意がはっきりしなくなる結果となっています。東京高裁がこの世論調査を使って選択的夫婦別姓を求める声が過半数ではないと判断したことに原告として大変不満に思っていました。
その点、今回の意識調査では自分はどちらを希望するか、と他人の結婚への意見との組み合わせで三つの選択肢を設けました。その結果、70.6%の人が選択的夫婦別姓に賛成であり、反対はわずか14.4%であるというすっきりとした結果が出ました。

今回の意識調査は次の点で私にとっては内閣府の世論調査と比べて納得できるものでした。
1. 調査母数が7,000人と世論調査の2,952人より多い。
2. 男女による違いがはっきり出ている。(選択的夫婦別姓賛成は意識調査では男61%女80.2%全体70.6%、世論調査では男も女も42.5%)
3. 都道府県別の数字が出ていて、県によって賛否倍率に3倍以上の開きがあることが明らかになった。世論調査では6段階の都市規模別の数字しかなく、あまり較差がなかった。
4. 世論調査から3年経っており、最新の意識変化を反映している。

残念だったのは50歳台までの人しか対象にしていない点です。60歳以上の人でも結婚することはあります。また子供や孫の結婚について意見を言い、影響を及ぼすことも考えられます。今後も継続して調査する場合には、内閣府の世論調査との比較のためにも同じ年齢構成で調査し分析して頂ければと思います。

私たちの三つの訴訟が最高裁に向いつつあり、また国会の場でも選択的夫婦別姓を巡る論議が高まりつつある時にこの世論調査の結果が出たことは大きな力になります。この貴重な成果を活かして、民法改正の大きな目標に向かって前進しましょう。

若者の意見受け止め、選択的夫婦別姓制度を導入することを国に期待

櫻井 彩乃氏 #男女共同参画ってなんですか代表

櫻井綾乃氏

#男女共同参画ってなんですかは、今夏実施された第5次男女共同参画基本計画素案へのパブリックコメント手続きに際し、若者(30歳以下)の意見をとりまとめ、提言とともに橋本聖⼦男⼥共同参画担当大臣に直接手渡しました。

1,050件ほど集まった意見の中で最も多かったのが、選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見でした。「結婚をしたいが今の法律のままでは法律婚ができず、家族をつくることができない」「別姓を選べないことを理由に結婚を諦めた」「自分のアイデンティティを結婚により失いたくない」といった意見が多数寄せられました。

今回のレポートで、既婚の若い年齢層、そして男性より女性がより強く選択的夫婦別姓制度導入を支持している状況が示されていることを、私は興味深く受け止めました。結婚してから「〇〇さんの奥さん」としか呼ばれず私のアイデンティティはどこへ行ったのか…なぜ姓を変えた側が様々な変更手続きを自分でしなければならないのか…夫婦同姓を強いられる苦しさをよりリアルに体感しているからなのかもしれません。

また、今回の調査には、これから結婚についてより深く考えることになる19歳以下が含まれませんが、「夫婦同姓が当たり前」という価値観が、決して少なくはない人たちを苦しめている状況を理解するには、10代に対する取り組みが重要なのではないかとも感じます。

国には、今回のレポート結果やパブリックコメントでの若者の意見を受け止め、選択的夫婦別姓制度の導入を実現することを期待します。また、地方自治体は、夫婦別姓・同姓の別なく、自分らしく暮らせる地域づくりを目指していただきたいと思います

「20〜30代女性8割以上賛成」を無視するなら、政治はどこを見ているのか

能條 桃子氏 慶応義塾大学経済学部4年/一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事

能條桃子氏

私は22歳の大学生ですが、自分が結婚する頃には、当たり前に苗字を選択できる世の中になっていてほしいと感じています。もし結婚したいと思ったときに、苗字を変えなきゃいけないとしたら、結婚を諦める選択をすると思います。それは自分の名前にアイデンティティがあり、またキャリアもこの名前で積んでいくと思っているからです。

20代・30代女性の8割以上が賛成と回答している今回のレポートを拝見し、結婚制度は誰のためにあるのか考える必要があるのではないかと感じました。結婚は、もちろん何歳になっても結婚する自由がありますが、結婚という選択をする割合が高い20代・30代が結婚したいと思える制度であるべきだと思います。特に96%のカップルが女性が改姓をしている現状を考えると、変える可能性が低い男性よりも女性の意見が尊重されるべきであると考えています。20代・30代女性の8割以上が賛成している制度、全体としても7割の人が賛成している議論に、なぜ踏み切れないのか、政治は制度を利用する人ではなく、誰を見ているのだろうかと感じてしまいました。

本来、一人ひとりがこの社会で生きやすくなるために存在するはずの政治が、「選択的夫婦別姓」という誰も困らないが必要な人が少し生きやすくなる制度が実現できないもどかしさを感じつつ、私が結婚したいと思う時までにこの制度が実現されることを切に願っています。

全国どこでも、反対者の2倍~10倍が賛成している。早急に民法改正を!

大澤 容子氏 mネット・民法改正情報ネットワーク 理事

mネット提供画像

47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査、お疲れ様でした。ご活動に敬意を表します。
47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査は、内閣府の「家族の法制に関する世論調査」(2018年公表)より多い7,000人を対象にし、都道府県別に分析がされたことから、より詳しい結果が得られました。

「容認(賛成)/通称使用は可/反対」の三択で尋ねた世論調査と違い、この意識調査での「別姓/自分は同姓にするが他の人の別姓を容認/反対」の三択のほうが、多くの人の知りたいことであり、法制化への判断材料として価値があります。

賛成が内閣府の世論調査の42.5%よりもはるかに多い70.6%になりました。都道府県別では、賛否倍率が最高の沖縄県においては、賛成が反対の10.3倍、2位の青森県で9.4倍です。最低の愛媛県でも2.4倍です。全国どこでも、反対する人の2倍~10倍の人が賛成しているということです。全国で、賛成が反対を大きく上回っていること、賛成多数の上位が首都圏や大都市を抱える都道府県でないこともわかりました。

結婚後に自分の姓を維持したいのは、人権問題であって、世論の動向で決めることが適切とは考えませんが、世論が法改正を滞らせている理由になっていることから、この調査結果を多くの方に知ってもらいたい、考えてもらいたい、そして国会において、早急に民法を改正し、夫婦別姓の結婚が選択できることを求めます。

当事者が望むのは「夫婦別姓強制」ではなく「選択制」だと示せた調査

小国 香織氏 第一次選択的夫婦別姓訴訟原告

小國香織氏

従来の政府の調査では、賛否の中に「夫婦別姓を自分が希望するか」がなく、傍観者的に他人がそうするのを容認するかの見方であり、戸籍上は同姓にすべきだが通称の法制化を認めるかどうかの選択肢がありました。

それと比較して今回の調査では、「自分が夫婦別姓を選ぶかそうでないか」の別も入れた上で「他の夫婦も100%同姓であるべきと思っているのか」を問うもので、ぜひ行ってほしいと思える問いでした。

全体では、「選択的夫婦別姓」という「姓をどうするか選べる」ことについてはざっと7割前後が賛成で、半数は大きく超えているのは心強い結果だと思います。また、従来からある「夫婦同姓にした上で旧姓の通称使用は認める」という選択肢ですが、時代の推移に従い、当事者に事実婚をより現実的な選択として考えて実践し情報交換・発信する人が増えてきた現在では古いものに見えます。この選択肢は夫婦別姓に違和感を持つが、通称使用というものの現実の限界を知らない状態での中途半端な容認派のためにあるようなものだと思ってきましたが、その選択肢がなくすっきりとした回答が得られたのはよかったと思います。

女性と若い年代に賛成が多いというのは、私も含め大方がイメージとして予想していたことかと思いますが、そのイメージと変わるところはありませんでした。近年、20代男性で反対が高い調査があると聞いた記憶があったものの、今回は特にそのようなことはないようです。

賛否倍率の順位でトップ3に東京、大阪、名古屋などの大都市を含む都道府県がなかったのは意外でした。上位3県は20代~30代男性に「みな同姓であるべき派」がいない層があるのが印象的で、下位3県を見ると、男性について過半数が「みな同姓であるべき派」と答えている年齢層があるところが目を引きました。

当事者が望むのは「選択的夫婦別姓」であり、夫婦同姓にしたいと望む夫婦の願いをはばむ「一律の夫婦別姓強制」ではありません。選択的夫婦別姓制度について、今回の調査で7割前後の賛成が得られているということは、法律を実際に改正することが十分容認されていると見てよいと思います。

名字を変えたくないのは「女のわがまま」ではない。「選択肢の自由」を全てのひとへ

山本 和奈氏  一般社団法人Voice Up Japan 代表理事

山本和奈氏

「苗字」というのは、私自身のアイデンティティーの一部です。
婚姻関係を持つも持たないも、それぞれの自由ですが、婚姻関係を持つことによって、自分のアイデンティティーの一部が奪われてしまうのは、「我慢すればいい」ことなのでしょうか?

異性婚を前提として話しますが、選択的夫婦別姓について話すと、「女のわがまま」と捉える人も、少なくはありません。もちろん、「男性側」が苗字を変える事も可能ですが、現状を見てみると過半数の「女性」が苗字を変えています。「男性が変えれば問題が済む」と言いますが、多くの男性は「自分の苗字を手放したくない」と言います。

そんなの、女性だって同じです。
私だって、同じです。

女性が、自分のアイデンティティーを持ち続ける選択肢は、「わがまま」なのでしょうか。
女性が「苗字を変えたくない」と思う気持ちは、「愛情が足りない」ことなのでしょうか?

女性も、男性も、どちらでもない人も、同じ命であり、同じ権利があるべきです。
「苗字を変えない」という選択肢、自分の名前を持ち続ける権利は、誰もが持つべきです。

レポートを見ていると、「夫婦別姓だと家族がバラバラに感じる」と見ますが、私が済む南米では、「夫婦別姓」が普通です。むしろ、夫婦同姓の方が珍しいぐらいです。

例えば、私が済むチリでは、子供たちは両親の苗字がつき、苗字が二つあります。
以前までは父方の苗字が先に来ていましたが、今は順番ですら選べます。
南米の家族は、バラバラでしょうか?
南米の家族は、一体感がないでしょうか?

私が見る限り、苗字によって「バラバラ」になる家族は、いません。
むしろ、自分の苗字を名乗り続けることは、個人としてのアイデンティティーを持ち続けることにつながっていると思います。

私は、自分自身の名前を名乗り続けたいですし、南米に来て母方の苗字を使う機会に初めて触れることができ、新鮮です。
そして早く、選択的夫婦別姓が実現する社会になって欲しいと心から思います。

選択的夫婦別姓は、あくまで、「選択的」です。強制ではありませんし、婚姻関係に置いて、同姓を選ぶ事も十分可能です。
誰も、「別姓」を強制していません。
「選択肢の自由」を全てのひとへ。