未投票の方必見!候補の選び方、なぜ衆院選でジェンダー意識が問われるのか

 

衆院選で問い直される人権問題

選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長の井田奈穂です。政治にまったく縁がない(と思いこんでいた)私が、2018年から国会や全国の地方議会で議員陳情をするようになって3年弱。素晴らしい議員に出会い胸打たれる一方で、「え!こんな人が議員なの?」と愕然とすることも、実はしばしば…。

議員は私たちの代表。私たちが報酬を払い、私たちに代わってルール作りを担うアバターです。でも100%理想通りの候補者などいない点で、引っ越しの物件探しと似ています。

そこで選挙にまだ行っていない方、特にかつての私と同じ「誰を選んだらいいかわからない勢」の皆さんに向けて、衆院選候補者アンケートや7月にあった都議選の結果をもとに「選び方」をおさらいしたいと思います。10月31日衆院選の投開票日に「選ばれる側」の皆さんの参考にもなれば幸いです。

完璧な候補者はいない。消去法でふるいにかける

実際の議員に会う経験を重ねると、ポスターやチラシ=「顔と名前を一致させるためだけのツール」、政見放送=「ええかっこしいの台本読み大会」でしかないと感じています(※個人の感想)。あまり当てにならないので、1票を投じる前に以下2点だけはぜひ、チェックしてください。

1.候補者アンケートを「自分軸」で絞る

同じ質問に全員が答える候補者アンケートを、私はどちらかといえば「考えが合わない候補の除外ツール」として使っています。今回の衆院選では、朝日新聞・東大NHK毎日新聞日本テレなどが候補者アンケートを行っています。

ここでは朝日・東大谷口研究室共同調査の候補者アンケートをもとに見ていきましょう。

しょっぱなから「他国からの攻撃が予想される場合には敵基地攻撃もためらうべきではない」「社会福祉など政府のサービスが悪くなっても、お金のかからない小さな政府の方が良い」ーーちょっとすぐにはイメージがつきづらいかもしれません。

すべての項目を見る必要はありません!あなたが「この項目は重要」と直感する2〜3項目だけでもチェックしましょう。

私は経験上、「ジェンダー平等」に不寛容な候補は真っ先に除外します。「種の保存」発言が記憶に新しいが、性自認や属性で国民を差別し、個人の尊重や平等原則に反する主張を正当化する議員は、残念ながら少なくないからです。たとえば私に「女性が男性と同じ権利があると国民に気づかせてはいけない」「少子化対策の鍵は、学生のうちに子どもを生みたくなる女子教育」「家父長制は必要」などと平気でのたまった議員が、今も街や国のルールを作っているんです。びっくりですよね。

ジェンダー感覚は、国難における政治の対応にも直結します。コロナ禍で女性の自殺者が増えましたが、それは何十年も性別による差別、つまり進学差別、賃金格差、雇用形態の不平等などを改善してこなかった政治のツケです。これだけ共働きが増えていながら、制度が未だに「男はバリバリ外で働き、女は専業主婦」モデル。つまりは「女に同等に稼がせる必要はない」「家事育児介護は女の仕事」なので、不況下では真っ先に非正規の女性たちが首切りに合うのです。

飲食業のやイベント業界、アート業界の方々も未だコロナ不況で苦しんでいます。私たちが、マイノリティの困りごとや痛みを顧みない政治家を選んでしまった弊害は、危機にこそあらわれると思います。人を残酷にも属性で切り捨てる代表者が、少子化対策や労働環境の是正、経済施策、官民学のリーダー登用、ひいては投資誘致、環境対策など、あらゆる面で足を引っ張っていると感じます。

というわけで、私は衆院選の朝日・東大調査では

「夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の名字を称することを、法律で認めるべきだ」(選択的夫婦別姓)

「男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだ」(同性婚)

「LGBTなど性的少数者をめぐる『理解増進』法案を早期に成立させるべきだ」

の3項目に、「賛成」「どちらかと言えば賛成」(両方合わせて64.1%)と答えなかった候補は、真っ先に投票対象から外しました。なお、選択的夫婦別姓・全国陳情アクションで集計し、一覧化した結果はこちら!

あの候補者は選択的夫婦別姓に賛成?反対? 【衆議院選2021版】
出典は朝日新聞・東大谷口研究室共同調査2021年衆院選候補者アンケートです。賛否をズラッと一覧化したところ、1+2の賛成割合は64.1%でした。賛成以外の候補を選ばなければ法改正が実現します。ただ「どちらとも言えない」や「無回答」と回答した中にも、選択的夫婦別姓に反対するため、地方議会への圧力文書を送った候補、1年以内に反対の寄稿をした候補なども含まれます。画像の中に★や◆でマークを付けました。

 

サイボウズ社・青野慶久社長が選択的夫婦別姓と同性婚に賛成しない候補をまとめた「ヤシノミ作戦」サイトもぜひ参照してください。

ヤシノミ作戦
ヤシノミ作戦とは、選択的夫婦別姓や同性婚を進めない政治家をヤシノミのように落とすことで、結果として賛成する政治家を増やし、制度の早期実現を目指す活動です。夫婦同姓も素晴らしい。夫婦別姓も素晴らしい。異性婚も素晴らしい。同性婚も素晴らしい。ヤ

若手インフルエンサーも人権面に着目

7月の都議選では、私と同じ軸で候補者を選んだインフルエンサーが多い印象でした。

猥談バーで人気のYouTuber・佐伯ポインティさんが、期日前投票の方法を指南した動画は46.8万回(フルバージョン9万回)再生。その中で彼も候補者アンケートから「選択的夫婦別姓と同性パートナーシップに賛成の候補者を選ぶ」としていました。ちなみにこの動画の存在を私に教えてくれたのは、来年有権者の仲間入りをする高校生の娘です。

Twitterトレンド大賞2020第2位だった #検察庁法改正案に抗議します の発信者である笛美さんも、「選択的夫婦別姓に賛成の人に投票します」というアピールをしていました。

今回の衆院選はどうでしょう。

選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会」の呼びかけ人でもあるarca社の辻愛沙子社長​​は、9月30日の記者会見で「日常で既に弊害を感じる人がいて、世論も変わっている。いま必要なことは、同じ議論をし続けることではなく、リーダーとして意思を明確にして法制度としてどうしていくのかというアクションの部分だ​​」と岸田首相に注文をつけました。辻社長は一般社団法人 GO VOTE JAPANを立ち上げ、20代など若者の投票を呼びかけています。

選択的夫婦別姓の法制化へ「国会も自民党も賛成議員に入れ替えを」。ビジネスリーダーらが訴え
選択的夫婦別姓の法制化を求めるビジネス界リーダーらが会見し、衆院選も足がかりに法制化の早期実現を目指していく必要性を訴えた。

ハフポスト日本版と、若い世代に政治や社会のニュースを発信している一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN(能條桃子代表理事)がU30(30歳以下)世代を対象に行なったアンケートでは、最上位が「ジェンダー平等(選択的夫婦別姓など)」となりました。

衆院選、どの党に投票する? 選択的夫婦別姓など、ジェンダー平等の政策を比較【政党アンケート結果(1)】
選択的夫婦別姓やクオータ制度の導入、男女の賃金格差是正の重要性についてどう考える?9政党の回答をまとめました。

私が参画している投票率を75%に上げるプロジェクトで「何を争点にしてほしいか」を聞いたアンケートでも、44,629名の回答者のうち、約75%が20~30代​​、そして8割を女性が占めました。「選択的夫婦別姓を導入してほしい」に「とてもそう思う」「そう思う」を足すと実に83%にものぼりました。

同性婚についても、合わせて92%もの人が「そう思う」と回答しています。

目指せ!投票率75%プロジェクト「みんなの争点10+

 

「ありのままの姓や性で幸せに家庭を築き、安心して生活や仕事ができる選択肢を認めてほしい」。そんな若者たちの声に政治は答えられるか、衆院選で問われています。

 

2.アドリブ発言を聴ける場に行く

候補者アンケートで「たぶんこの人かな」と絞れてきたら、1度でもいいから、候補者が台本を読まずに話している場面に、あえて遭遇してほしいです。投開票日前日までは必ず街頭演説やっているので聴いてから投票もいいですね!実は選挙までにはタウンミーティング、都政(国政)報告会、事務所びらきなど、選挙前は直接話を聴ける機会が山ほどあり、良くも悪くも「え!こんな人だった…?」と驚くことが多いのです…。

何を実現したく、どれだけ具体的に、真剣に考えているか。とっさに発するアドリブ発言に政治姿勢、信条があらわれます。台本棒読み会見では出てこないような金言や失言が、国会中継や記者会見など、質疑の中で浮き彫りになるのと同じ原理ですね。自分が気になることはどんどん質問しましょう。

「街頭演説でよく見かけるから頑張ってそう」と安直に信じるのも危険です。話す「内容」を観察してください。私は街頭演説で子育て施策を熱く語っていた候補者から、マイクを切った時、ひどい人種差別発言が飛び出して驚いた経験があります。街宣車で名前だけ連呼する議員もおすすめしません。

人権問題に「どちらとも言えない」「無回答」という卑怯さ

衆院選の候補者アンケートを集計していると、「あれ??」と気づくかも。「反対」の議員ははっきり意思を表明していて、ある意味清々しいのですが…、

 

長期政権の間、議論すらさせず、菅・岸政権になっても他の議員に法改正を潰すよう指示をしてきた安倍晋三元首相が「無回答」なのです(NHK調査には、10月27日になって「無回答→反対」と回答を変更)。

「どちらとも言えない」と答えた候補の中にも、地方議会への圧力文書に名を連ねるなど、当事者の声を国会に届けさせないよう画策した反対議員が含まれています。

今回、自民党はただ主要9党のなかでただ1党のみ、選択的夫婦別姓という文字を公約にも入れず、党首討論でも岸田首相が「賛成」に挙手しませんでした。それを反映するかのように「賛成」以外には圧倒的に自民党候補が多いのが特徴です。

都議選でも同様でした。私たちは選択的夫婦別姓に絞った議員検索システムを作ったのですが、最終集計では、自民党候補の85%が、選択的夫婦別姓導入の賛否に「無回答」(同性パートナーシップでは90%)だったのです。「無回答」は維新1人、都民ファ1人、自民はじつに56人。多くの国民がここまで40年も苦しんで声を上げ、7〜8割の国民が賛意を示し、注目されている人権問題に「答えない」とは、率直に言って卑怯だと感じました。

ことに都議会では、6月に私たちの請願から生まれた意見書が可決したばかりでした。「自分たちは選択的夫婦別姓に賛成だ」と可決のために懸命に動いてくれた小宮安里議員は「どちらかといえば賛成」だったのですが、山田加奈子議員は「無回答」。山崎 一輝幹事長、髙島直樹東京都支部連合会幹事長(役職は改選前)も、「無回答」。

賛否を表明すると党から叱責されるのか、あるいは日本会議や生長の家、統一教会など選択的夫婦別姓に反対する支持団体から司令を受けているのか。いずれにせよ、人権問題への回答を避ける候補は、当選後どっちに転ぶかわかりません。私たちは1票を候補者個人に入れます。よって小選挙区では「どちらとも言えない」「無回答」も、「反対」「どちらかと言えば反対」同様、除外すべきだと感じました。

 

選択的夫婦別姓に「反対」は全員落選した

都議選の結果をおさらいします。選択的夫婦別姓に「反対」「どちらかといえば反対」と答えた議員は全員落選しました。さらに「無回答」が大半だった自民党は、当初50議席は堅いとの情勢調査を覆して33議席に終わり、「苦戦」「こんなに負けるのか」と伝えられました。政権与党であることを考えれば、「自公で過半数」の目標に届かなかった衝撃は大きかったのでしょう。

反対に明確に「賛成」と答えた自民党候補はわずか3名でしたが、全員当選したのは象徴的でした。

葛飾区は特に明暗がわかれました。3期目を狙う現職の舟坂誓生議員は「無回答」だったのですが落選。しかし「賛成」と答えた平田充孝議員は、区議から初当選しました。平田議員は、改姓の苦痛や事実婚の不安を訴える私たちの声を聞き、「応援する」と、国へ選択的夫婦別姓推進の意見書を出してくれた当時の葛飾区自民党の一人で、議長でもありました。

台東区選出の鈴木純議員も「賛成」と回答し、当選。区議時代、女性研究者とその夫の訴えを親身になって聞き、議会で「女性活躍にもかかわる課題。これから国で議論してほしい。たくさん困っている人がいる」と賛成討論もしてくれました。埼玉県議会で自民党起案の「選択的夫婦別姓制度の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書」が可決した時も感動しましたが、自民党にも困っている人たちに耳を傾け、堂々と「賛成」表明し、尽力してくれる素晴らしい議員はいるのです。信条を明らかすべきです。

埼玉県議会で自民党起案の「選択的夫婦別姓制度の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書」が可決
埼玉県議会本会議で2021年7月2日(金)、自民党県議団が起案した「選択的夫婦別姓制度の導入に向けた国会審議の推進を求める意見書」が可決しました。これは私たちをはじめ埼玉在住・出身の3団体代表が6月14日に提出した「選択的夫婦別姓制度につい...

6月に示された最高裁の決定でも、「国会で議論すべき」とボールは立法府に投げ返されています。法改正の方向性を示した法制審議会の答申が放置されて四半世紀。法改正を阻んできた自民党も、そろそろ一人ひとり堂々と立場を示すべき時ではないでしょうか。

もちろん有権者にも反対派はいます。うっかり「隠れ賛成候補」を議会に送りたくないはずでしょうから。

ジェンダーへの考えはリトマス試験紙

コロナ禍を経験し、私たちは自分の命や、行動・選択の自由、尊厳が政治によって左右されることを学んだと思います。次の衆院選では、最高裁判所裁判官国民審査もあります。人権問題に解を出せる政治家、裁判官を選びたいものです。

私は選択的夫婦別姓や同性婚に「反対」「無回答」は、「何の落ち度もない人を属性で差別し、切り捨てる人間」をあぶり出すリトマス試験紙のようなものだと思っています。

すでに「反対」の国会議員50名は明らかになっていますが、衆院選でもアンケートで「反対」「無回答」を表明した候補には、しっかり落選していただくべきです。言うまでもありませんが、公職選挙法では落選運動は選挙運動にあたりません。憲法でも保障された国民の権利です。

そして衆院選では、先の最高裁で夫婦同姓を義務付ける現在の法律を「合憲」と判断した裁判官には、最高裁判所裁判官国民審査で「×」印をつけると決めています。有効投票の過半数で×がつくと罷免できるからです。こちらも大切な国民の権利です。

今回でいうと、長嶺氏、岡村氏、深山氏、林氏が「☓」の対象です。すでに「#長岡村の深い林」と覚えて選挙に行こう!とハッシュタグが賑わっています。


社会は有権者一人ひとりの力で変えられます。多様な人がいることを認めあい、無駄死にせず、少しでも多くの人が平等な権利を持って幸せに暮らせる国にできると信じています。皆様にもぜひ、ジェンダーへの考えを軸に候補者や裁判官を見極めることをおすすめします。

 

まとめ:ジェンダー平等を投票で実現するには?

  1. 小選挙区は党派を問わず、選択的夫婦別姓/同性婚に「賛成」の議員に投票する。
  2. 比例区は公明党か野党(立憲民主、共産党、社民党、れいわ、国民民主党)に投票する。
  3. 最高裁裁判官国民審査では、長嶺氏、岡村氏、深山氏、林氏に「☓」をつける

長野のメンバーが作った「投票のすすめ」

 

参考URL

あの候補者は選択的夫婦別姓に賛成?反対? 【衆議院選2021版】

あの候補者は選択的夫婦別姓に賛成?反対? 【衆議院選2021版】
出典は朝日新聞・東大谷口研究室共同調査2021年衆院選候補者アンケートです。賛否をズラッと一覧化したところ、1+2の賛成割合は64.1%でした。賛成以外の候補を選ばなければ法改正が実現します。ただ「どちらとも言えない」や「無回答」と回答した中にも、選択的夫婦別姓に反対するため、地方議会への圧力文書を送った候補、1年以内に反対の寄稿をした候補なども含まれます。画像の中に★や◆でマークを付けました。

選択的夫婦別姓と同性婚に賛成しない候補をまとめた【ヤシノミ作戦】

ヤシノミ作戦
ヤシノミ作戦とは、選択的夫婦別姓や同性婚を進めない政治家をヤシノミのように落とすことで、結果として賛成する政治家を増やし、制度の早期実現を目指す活動です。夫婦同姓も素晴らしい。夫婦別姓も素晴らしい。異性婚も素晴らしい。同性婚も素晴らしい。ヤ

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