「結婚して初めて自分の名前の大切さに気がついた」 陳情アクションメンバー・さとこさんインタビュー

結婚する時は女性側が名前を変えるものだと言われ育ってきた、というさとこさん。ですがいざ結婚となった時に自分でも想像していなかった混乱や寂しさ、そして苦痛を味わい、そこから選択的夫婦別姓についていろいろと調べだしたそうです。結婚して初めて実感したという「彼女のリアル」に迫ってみました。

改姓を実感した瞬間、混乱し寂しさと苦痛を覚えた

--さとこさんが選択的夫婦別姓に興味を持ったきっかけを教えてください

さとこ:昨年結婚して、改姓したことがきっかけです。女性なので「なんとなく」結婚したら改姓することを想定はしていましたが、それを具体的に実感した瞬間、すごく混乱して、寂しさと苦痛を覚えたんです。

私は大きな実績のあるキャリアウーマンではありませんが、この名前で長く過ごすうちに、無意識に今の氏名に愛着が湧いていました。

夫に変えてもらえないか…と一瞬考えもしましたが、一生名字を変えないつもりで生きてきた人に、女性が改姓して当然という文化の中で改姓させるのは私以上に苦痛だろうと思いました。

親からは「お嫁に行ったら苗字が変わるのよ」と言われて育ちましたし、結婚が決まった時、双方の親から苗字をどちらにするのか聞かれることさえありませんでした。また、夫の苗字が嫌なわけではなく、とても良い名前なんです。

「みんな変えているし、本来は幸せなこと。
慣習だと思って割り切ろう。仕事では旧姓も使えるのだから」

と自分を納得させて婚姻届を提出しました。

夫婦同姓の制度しかないままだと根本的な解決にはならない

さとこ:ですが、職場で一部旧姓を使うことはできても『注意されない範囲で旧姓を勝手に名乗っているだけ』。今後職場の都合によっては戸籍姓を使ってくれと言われるかもしれません。仕事以外で本人確認を求められる手続きにおいてはほぼ戸籍姓を使わざるを得ません。どんどん自分の名前が新姓に塗り変えられていきました。

結婚する前は

「一家は同じ苗字の方が良いから、夫婦同姓は合理的。
でも妻が改姓して当たり前という慣習はおかしい」

という考えでしたが、

「じゃあ夫に変えてもらえば良かったのか?」

と考えた時、それで解決するわけじゃない。望む場合は別姓で結婚できる制度があるべきじゃないかと思ったんです。

周囲が漏らした「変えたくなかったけどね」という声

--夫婦同姓の制度しかないままだと根本的な解決にはならない、という事にさとこさんは気づいたのですね。

さとこ:そうです。そういえば周りでもポツリと「変えたくなかったけどね」と言ってる人が何人かいたなと。

こう考えるのは私だけでは無いのでは?夫婦同姓の強制規定というのは、別姓の選択肢を一切認めないほどに合理的なのか?と疑問を持ち、ネットで色々検索したり、2015年の合憲判決について調べたりし始めました。

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夫婦同姓以外の点においては、意外と名字に関して柔軟な制度が揃っている

--ご自身で調べていった中で思った事、感じた事はありましたか。

さとこ:
そうですね…新婚なのに、毎日毎日通勤中に判決文や青野さん等の訴訟サイトを読み漁っていました。その中で感じたことは

1.
夫婦同姓以外の点においては、意外と名字に関して柔軟な制度が揃っていることを知って感心した
2. 最高裁の合憲判決と、なかなか立法されない現実に対して「じゃあどうすれば良いの⁈」と絶望を感じた

の2点でした。

1点目については、婚氏続称(※1)、縁氏続称(※2)、外国人と結婚した人の改姓選択肢、さらには内縁の相手の名字を長年通称として名乗ってた人がその名字に変えられたり。言ってみれば色々と「手厚い」のに、結婚のときだけは頑なに夫婦同姓・通称使用しか認められてないんだ…と違和感を覚えました。

2点目については、これだけ困っている人が多くいるのに、2015年に最高裁で合憲判決が出ている。判決文では国会で議論されるべきと言われているが、肝心の国会では「慎重に検討」「家族のあり方に深く関わる」といった言葉で何年もかわされ、動いていない。となると、もうどうしようもないのでは?と絶望しました。

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(※1)婚氏続称とは・・婚姻の取消又は離婚により婚姻前の氏に復した者が、取消又は離婚の際の氏を称すること
(※2)縁氏続称とは・・養子縁組の取消又は離縁により縁組前の氏に復した者が、取消又は離縁の際の氏を称すること

手続根拠:戸籍法第69条の2,第73条の2,第77条の2,第75条の2

行政手続案内:戸籍の届出(縁氏続称,婚氏続称)|電子政府の総合窓口e-Gov
イーガブ
電子政府の総合窓口(e-Gov)。名称やライフイベントなどから手続情報を探すことができます。shinsei.e-gov.go.jp

改姓は「女性自身も当然に受け入れている(望んでいる)はず」と思われている

--さとこさんが絶望を感じながらも行った行動、または考えた事・気づいた事はありましたか?

さとこ:個人で動く方法は限られるよなぁ…と思い、世論を動かすために小さなところからコツコツと、と考え周囲、特に未婚男性に対して

「女性が改姓して当然と思っていない?必ずしも嬉しいとは限らないし、本来平等に話し合うべきなのに実質選択肢が無いのはおかしいと思わない?」

と話していました。地道過ぎますが、世論調査の賛成比率を上げようと思ったのです。

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--周囲、特に未婚男性からの反応はどうでしたか?

さとこ:そうですね・・・

「結婚しても自分は名前が変わらない。変わるのは婿養子などの特殊な場合だけ」

と思い込んでる人がほとんどでした。また、名前が変わることに戸惑っている私に対して

「そんな気にすることじゃなくない?!」
「旦那が嫌なの?」

と言われました。多分、女性が改姓して当然というのは

「女性自身も当然に受け入れている(望んでいる)はず」

とセットで認識されているようでした。

陳情アクションを知ったきっかけはインターネット

--陳情アクションはどうやって知ったのでしょうか。

さとこ:偶然ネットで知りました。とにかく公式サイトが充実していて、マメに更新されていることに驚きました。「ド素人でもできる」「どこの政党・会派にも所属していません」という点にも安心しましたし、こんなに熱く真剣に行動されてる方がいるんだなと勇気づけられ、もっと積極的に、かつ効果的に選択的夫婦別姓に近づくかも、と思い参加することにしました。

地元区は既に別のメンバーが活動中で、ちょうどクラウドファンディングの企画が立ち上がっていたタイミングでもあったので、現在は主にクラウドファンディング側の活動に携わっています。

思ってるだけでは世の中は動かない、声を出すと少しは世の中を変えられるかもしれない。身の回りの人に地道に言うだけでも効果はあるけど、陳情アクションに入ることで、よりダイレクトに世の中を変える活動ができていると思います。

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--最後に、家父長が根強く残る日本の結婚式イベントですが、何かエピソードがあれば教えてください

さとこ:夫婦や家族の思い出になるイベントは何かしたい・・ということで結婚式を挙げました。「家と家との繋がりを重視する」といわれる神前式を選びましたが、ごく身内だけで挙げたせいかあまりその要素は感じませんでした。

「誓詞奏上」という儀式の最後に、新郎は氏/名を・新婦は名のみを読み上げるのが慣習ですが、「これからもこの氏名で頑張っていきたい」という気持ちで新郎氏/名・新婦氏/名に変えさせていただきました。

ただし、多くの親戚や仕事関係者を呼んで披露宴を挙げるとなるとどうしても「慣習」として家を意識する形式、新郎を立てる形式にせざるを得なかったかもしれません。六曜と同じで「ゲストが気にするかもしれない」演出・構成は勇気がいるからです。

とはいえ結婚イベントの常識は時代でどんどん変わっていくもの。例えば「仲人」とか「結納」なども減ってきていますよね。一方、何もしないというのはもちろん、友人だけのパーティーや海外挙式なども増えています。選択的夫婦別姓が実現したら、また新しい結婚式のスタイルが出てくるんじゃないかなと期待していますし、「こうあるべき」という固定観念が変わっていくと良いなと思います。


文・投稿:Y