長野県のメンバーが集まり結成した「陳情アクション信州」主催による初のイベント「春のゆるっとお茶会〜みんなで結婚と名字について考えよう〜」を、2020年5月10日に開催しました。新型コロナウイルスの緊急事態宣言下だったため、オンライン会議システム「Zoom」での開催となりましたが、上田市会議員、長野県議会議員、国会議員、市民参加による50人以上もの超党派勉強会に。活発な議論が交わされました。
長野県メンバーが集まった「陳情アクション信州」による初イベント
企画したのは「陳情アクション信州」、4人の県内在住/出身メンバーです。2020年3月に選択的夫婦別姓・全国陳情アクションでつながって初めて顔を合わせ、県やそれぞれの自治体への陳情・請願を目指すために、まずは上田市で勉強会をやってみようということになりました。
企画メンバー紹介
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- 吉澤 茉帆(松本市出身、上田市在住)
- 内山 由香里(東筑摩郡出身、上伊那郡在住)
- 森田 久美子(上田市出身、東京都在住)
- 平澤 慎(伊那市出身・在住)
議員17名+参加者36名+メディア5名で開催
当日は、長野県選出の国会議員3名、長野県議会議員6名、 上田市議会議員7名、佐久市議会議員1名の方々にご参加いただきました。全ての政党・会派と、メールアドレスを公開されている皆さまにお知らせしたため、自民党、国民民主党、公明党、日本共産党など超党派での開催を実現することができました。
また、今回は市民参加、しかもオンラインでの勉強会ということで、長野県内はもちろん、北海道から九州まで全国から36名の市民の方が画面越しに顔を合わせました。メディアの方も5名参加され、翌日には3紙の朝刊に掲載いただきました。(信濃毎日新聞、毎日新聞(長野県版)、朝日新聞(長野県版))
当事者の思い、困りごとがあふれた2時間半
冒頭に市民の参加者と県議と市議の方を簡単にご紹介しました。改姓を経験した女性だけでなく、妻氏婚をされた男性、事実婚のご夫婦、ペーパー離婚・再婚をされた方、これから結婚を考えているカップル、国際結婚等で別姓婚をされている方と多彩な方に参加していただきました。県議や市議の先生からは、「これまで選択的夫婦別姓について知ることが少なかったので、当事者である市民の思いを知りたい」という声もありました。
国会議員の3名の皆様には簡単にご挨拶いただきました。国会議員の先生はいずれも、選択的夫婦別姓の実現に直接的にも間接的にも取り組んで来られており、力強く感じました。
その後、事務局長の井田から選択的夫婦別姓についての説明があり、県内メンバーの体験談を話してから、参加された方々からの発言やチャットでの質疑応答…と、2時間半はあっという間に過ぎていきました。
「協力して実現を」議員の皆様が口々に
この記事では、17名の議員の方のコメントを紹介します。字数の都合や文としてわかりやすくするため、趣旨を変えずに発言の内容をまとめたり補足をした部分があります。
冒頭の国会議員の皆様のコメント
- 衆議院議員・篠原孝さん(国民民主党)
周りの女性議員にも多く、職場でも旧姓を使って働いている女性が多いにもかかわらず、なぜこんなに社会に定着していないのか疑問に思っています。女性議員を増やすことは熱心にやっています。
自民党以外はみんな賛成しているので、自民党の先生に働きかけるのが一番だと思います。圧倒的政権与党ですからね。
- 衆議院議員・太田昌孝さん(公明党)
今日は母の日にこういう会が行われるということも象徴的なことなのかなと思います。私は妻と母に花を送りましたが、女性に対する敬意を示すということですね。
夫婦別姓については、現行制度ではどちらも選べると言っても圧倒的に女性が不当に不利益を被っています。私自身は市議会と県議会を15年間務めて、2017年に国会に送っていただきましたが、県議在職中の2010年には、県議会で「夫婦別姓に慎重であるべき」という意見書が採択されています。自民党から出された意見書でしたが、当時高島陽子さん(長野県議)も反対の答弁に立たれて、私も与党公明党で議員2名で反対したという経緯があります。
2001年には、長く法務部会長をされていてた(前衆議院議員の公明党)漆原良夫先生が、民法改正の法律案というのを提出されています。おそらく与党が改正の法案が出たのは唯一なんだろうと思います。以後そうした法案は出されていません。
住民票やマイナンバーにも旧姓併記できるようになったり、社会情勢も変化しているんだろうと思います。
与党として皆さまと心を合わせて実現に向けていきたいと思います。井出先生も自民党に入られて心強く思っていますので、協力して進めたいです。
- 衆議院議員・井出庸生さん(自民党)
選挙区である上田・佐久の皆さんと夫婦別姓の問題を語る機会がスピーディーに実現したことを大変嬉しく思います。
私はこの問題は推進すべきと考えてきていまして、国会議員になってから私も野党の時代に法案の提出者になったのですが、その後実際に国会で議論が進んでいるかというところをなかなか見れていませんでした。2018年の予算委員会で、安倍総理と野田聖子議員に対して30分この問題をやらせていただいたのが自分の最初の取り組みで、2019年には超党派の勉強会の1回目を井田さんのご協力を得てやりました。
自由民主党は20年近く前に1度大議論をして、裁判所に許可を取れば別姓を認めるところまで考えをまとめたようなんですが、実現には至りませんでした。その当時の議論で疲弊してしまっている議員も年配層に多いんですが、一人ひとり聞いてみれば賛成だという人も大変多いので、皆さんの力を借りて、なんとしても党を超えてみんなが賛成できるような形で、全国地方政党問わずやっていくことが僕の目標ですので、皆さんの力もお借りできればと思います。
結びにいただいた議員の皆様からのコメント
勉強会をとおしての感想、選択的夫婦別姓への賛否、今後ご協力いただけるならばどのようなことが可能かお尋ねしました。
上田市議
- 石合祐太さん(新生会)
課題が多く消化不良気味なほど。
個人が個人として大切にされる人格権をどう保証していくかということであり、自分らしく、楽しく、誇らしく暮らしていく権利の保証は政治の責任。大賛成。議会としての協力の仕方を今日の参加者とともに考えていきたい。
- 斉藤達也さん(新生会)
事前のレクチャーで理解したつもりだったが、新しい発見もあった。
- 「生活上の困りごと」というキーワード。政治が取り組むべき市民の困りごとだと思った
- 「慎重な人には事実とデータ、理屈で伝えること」。議員同士でも必要
- 「強制ではなく、選択肢があること」がとても大切なこと。教育でも、選択肢があるということは大切なことだと思っているので、賛成の立場で進めていきたい。
- 林和明さん(新生会)
賛成。様々な夫婦のあり方や考え方が広く認められる世の中になっている。同姓別姓など様々な考えが尊重されるようになっていくべき。選択肢を増やすことを推進していくために、上田市議会で採択される雰囲気作りをしていきたい。
- 池田総一郎さん(上志の風)
2時間半に渡ってたくさんの知見をいただいたと感じている。
強制的な夫婦同姓から別姓を選択できるので、現行法より許容度が広い制度になると思う。地域社会の中ではなかなか論じられていないと感じているので、議論でもっともっと広めていかなければならない。合理的な考え方を進めたい。真ん中より選択的夫婦別姓賛成に傾いている。
- 井澤毅さん(新生会)
正直な話、今まで生きてきた中で、選択的夫婦別姓ということについて考える機会がなかった。議員になって初めて、こういうことに悩み苦しんでいる多くの方がいるということを知って、今日も大変勉強になった。
上田の中でも田舎の方に住んでいるので、どちらかと言うと男性社会の中で当たり前の価値観の中にいたと改めて痛感している。国民の多くの方が法改正に賛成しているということ、夫婦同姓を強制する国が日本だけということを知らなかったし、驚いた。男女平等ということを当たり前としているが、世界的に見ればG7の中で最下位と言うランキングの中で、もう一度いろんなことを見直していかなければと思う。
賛成議員として上田市で議論していきたい。
- 斉藤加代美さん(新生会)
大賛成。議員の中でも選択的夫婦別姓の動向を知らず、もう別姓が選べると思っている人がいるので、実際実態を伝えて、市民の生活の困りごととしてとらえたい。1996年に結婚したが、自分もキャリアがなくされてしまうように感じて、1年間婚姻届を出さなかった。結果夫の姓にはなったが、3人の子育ての中であまりそのこと振り返ることがなかった。4%の方が結婚を断念しているという実態もあるので、皆さんが幸せな選択をしながら結婚して、子どもが持てれば持って、家庭を持てる世の中になるよう後押ししたい。
- 松尾卓さん(公明党)
詳細なデータや声を聞かせてもらって、大変勉強になった。
長野県ではまだ意見書が出されているとことがないということで、働きかけがあれば上田市で細かな手続きやうまく議論が進むように協力して進めていきたい。意見書を上げることも大事だが、多くの方にこの問題をしっかりと考えてもらうことが重要だし、議会でもしっかりと議論していくこと、市民の皆さんにもこの問題を考えていただける機会を作れるとよいと思った。
- 選択制について、いろいろな案があるがどう違うのか
- 選択できるようになったときに考えられる課題が何か、教えてほしい
長野県議
- 高島陽子さん(改革・創造みらい)
県議会での経緯があるのでハードルが高そうで、抵抗が目に浮かぶが、賛成の立場で支援していきたい。
- 高村京子さん(日本共産党)
国際的な部分での困難や大変な状況があることもわかった。1970年代に国連で女子差別撤廃条約が採択されていて批准していて、3回に渡って勧告もきているのに、法改正できてないのは日本だけ。今後世界の皆さんと交流していくという環境の中では、県議会から6名参加があったことがとてもよかったし、自民党の方にも困難や苦しみが伝われば大事なことだ、変えていかなければと感じると思う。長野県への勉強会もお願いしたい。
- 望月義寿さん(改革・創造みらい)
元々、アイデンティティの点からも伝統の点からも夫婦は別姓であるべきだと思っていたが、強制は問題が生じるので選択的夫婦別姓はいいと思う。そうした意見を国にも届けるよう、市民の声、県民の声として請願を出してもらえたら。具体的にどう成立させていくのかは、改革みらいや国民民主党の先輩方とも協力していきたい。
- 大井岳夫さん(自民党)
結婚の時に男女どちらの姓にするかという話題すらためらうカップルは多いのではないかと思った。
女性活躍推進社会に対して異を唱える方は少ないが、形として何を掲げていくのかという時に、選択的夫婦別姓の実現は非常に大きなメッセージ、PRになるのではと改めて思った。賛成の立場で、会派内で先輩方に情報提供と問題提起をしていきたい。
- 中川博司さん(改革・創造みらい)
ゆるっと参加しましたが、皆さんから真剣な話を聞いてやらなければと思っている。もともと夫婦別姓の運動をやってきたが、多勢に無勢とずっと思っていて半分くらいしばらく無理かなと思っていた。いろんな運動が盛り上がってきていて、もう一度皆さんの力を借りて突破していかなければと思い直した。いろんなチャンネルで入っていくのがいいのかなと思う。長野県議会や県もSDGsを進めていくことには賛成なので、それを入り口にして進めて行くのもひとつの考え方だと思う。議会にはたらきかけていく。
- 竹内正美さん(自民党)
私は男女雇用機会均等法以前から働いているので、育ってきた子どもたちが結婚する時に私たちの想像もつかないような違和感を感じるんだと思う。これからの子どもたちのことを考えて方向を決めていきたい。自民党に反対議員がいる。アイデンティティを奪われたときの苦しみが想像できていないのでは。会派を超えて勉強会をやりたい。私自身も結婚で改姓したので、生まれ故郷では選挙カーから旧姓を叫んだ。政治家は不安や困りごとを取り除くのが仕事。
佐久市議
- 吉川友子さん(新政ネット)
自分は国際結婚なので別姓でやっていて、できてよかったという部分が多い。子どもたちも両方の姓を持っていて、日本では問題なく暮らしているし、アメリカに行った時は別の姓でというやり方で問題なくやっている。誰にでも選択できるようなチョイスになっていくべきたと感じている。選択を与えることに対して、何が問題なのかということの方が知りたい。逆に反対の方の意見を聞いてみたいというのが本音。そういった機会には情報共有できれば。
国会議員
- 篠原孝さん(国民民主党)
夫婦別姓の問題をそれなりにわかっているつもりだったが、日常生活でこんなに不便があるということを初めて知った。外から眺めている限りでは、法改正の9合目まで来ているのでは。井出さんは法務部会で野党側でずっとこの問題をずっとやっていたので、与党で実現してほしい。活動する際には反対する人に対しても偏見や決めつけを持たずに話をするように心がけることが大切。
- 井出庸生さん(自民党)
面識のあった吉澤さんの頑張りに触発された。私はこの問題をずっと進めてきているので変わらずやっていきたい。
県議会で慎重な意見書が採択されたという話があったが、国会でもこの話が少し盛り上がったのは本会議での否定的なヤジがきっかけなので、臆することなく進めてもらいたい。
メディアの方には長野県知事に話を聞いてみてもらってもいいと思う。
誰がどの党がやっても、みんなが喜ぶ、誰も最終的に不利益を被る人のいないみんなの問題と思っている。誰がやるかではなく、みんなで1日も早く実現するためにやっていきたい。
ステッカーの配布も開始
コメント以外にも、チャットや発言で様々な質問や提案をいただきました。このレポートで全てを紹介することはむずかしいので、陳情アクション信州のnoteにまとめていく予定です。
選択的夫婦別姓と長野県での活動を知ってもらい、請願メンバーや活動サポーターの募集をするためのステッカーも完成し、配布しはじめています。応援いただける方はご連絡いただければうれしいです。
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— 選択的夫婦別姓・陳情アクション信州 (@shinshu_action) June 5, 2020
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掲載メディア
朝日新聞(長野県版)