選択的夫婦別姓について国会議員からの質疑応答・書き起こし(2020/2/14超党派勉強会より)

2020/2/14に行った超党派勉強会にて何名かの国会議員の方々から選択的夫婦別姓について質問をいただきました。いくつかの質問には小池信行弁護士(元法務省⺠事局参事官、のちに 法務省大臣官房審議官/東京高裁判事)にお答えいただきました。その模様を書き起こしにてお伝え致します。

Q三宅しんご参議院議員(自由民主党):
たいへんすばらしいお話をありがとうございました。わたくしは自由民主党の国会議員でございまして、自分たちの生きる制度を見直す、整えるのが政治の役割だと思っておりまして、ぜひこの夫婦別姓を制度化したいと思っております。
その上で二点、小池先生にお伺いしたいと思います。第一点めはですね、戸籍法上、日本人同士の婚姻・離婚、そして外国人との離婚・婚姻の場合で、氏の取り扱いが異なっているということでございますけれども、これは法務省としてはどのような整理をされているのかというのをお聞きしたいと思います。
そして二点めはですね、この法制審の答申がですね、残念ながら日の目を見なかった、担当参事官としてはですね、大変残念だったことだろうと拝察をいたしますけれども、現在、たぶん法制審で議論された時も、さまざまな妥協の産物でひとつの答申にまとめられたとは思います。たぶん参事官の個人的な動きとは異なる部分もあったのではないかと思います。お聞きしたいのは、現時点、一人の法律家としてどのような点においてですね、法制審と異なる、というかもっと改善すべき案があれば、ご教授いただきたいと思います。

A小池信行弁護士:
お答えいたします。
現在「氏」というのは、これは民法によって定まるというのが大原則でございます。一方に戸籍法上、呼称上の「氏」とよばれるものがございます。先生がご指摘のように、外国人と日本人が婚姻した場合、日本人のほうが戸籍で外国人と同じ氏を称することができる、ということになっております。民法上の氏はこれは変更がない、民法上の氏は変わりなく戸籍上の氏を称している、という取り扱いになっております。つまり、民法に定まる氏と、戸籍法によって定まる氏二本立てを日本の制度に取り入れている、ということになります。
この二つの関係をどう見るか、というのはじつは、かなりこう難しい問題がありまして、さきほど、離婚した場合に婚姻当時の氏をそのまま引き継ぐことができる、というそういう制度をいま採っているわけであります。つまり、離婚しても同じ氏だ、ということを青野さんがおっしゃいましたけれども、まあ確かにそういう制度は採っているわけであります。
じゃあ、婚氏を俗称して、婚姻した時の氏を俗称して、その方が再婚した場合にその氏はどうなるのか、ということになると、これは民法上の氏なのか、戸籍法上の氏なのか、どちらかよくわからない、というようなことがありまして。さきほど井田さんも言われましたように、氏の二本立て、最終的には三本立てなんですが、というような問題がいま生じているわけです。
でも先生がおっしゃった「考え方」としては、民法で定まる氏と戸籍法で定まる氏というのは、法律の概念の上では別にしてあります。それがどうも実際には混同しがちだという問題をこの制度は抱えている、ということを申し上げたいと思います。
それから、現時点で考えて望ましい制度は、法制審議会の答申とは違うのか、という話がございました。わたくしも子の氏に関しましては、出生時に夫婦の協議で決めるという考え方でよろしい
のでないかなと思います。
世界の、諸外国の法制を見ましても、婚姻時に決めてしまうという制度はじつはないんです、たぶん。わたしは承知しておりません。
したがって、人間の自然の情のありようとして子供の生まれた時に(決める)、それもあの、子供の氏を必ずしも統一しなくても、長男は夫の氏、長女は妻の氏というような、ばらばらの状態であるという決め方でもいいのかな、というふうに思っております。つまり、子どもの氏は両親のいずれかの氏をつないでいく、そういう制度でよろしいのではというふうに考えております。

Q嘉田由紀子参議院議員(無所属):
よろしいですか? 参議院の嘉田由紀子でございます。
夫婦別姓について、わたくし自身は文化人類学をずっとやって世界の家族を見てきました。そもそもいま、夫婦同姓が日本の伝統だと言うけれども、日本は違うんです。地域によっても、時代によっても。そのことを改めていま、多様な家族制度を多様な実態に即して選べるようにする、それが国民にとっての最善の利益だろうと思いますので、その点をあの、日本は元々多様なんだと。そして、家制度自身が明治31年に、いわば軍国主義拡大の中で男尊女卑で作られた、ということを、改めて国民的に学ぶ必要があると思っております。

Q
音喜多駿参議院議員(日本維新の会):
貴重なお話をありがとうございます。参議院議員の音喜多駿と申します。

日本維新の会も選択的夫婦別姓を公約に掲げているんですが、いま党内で議論されているのは、戸籍をなくしてしまうということに非常に抵抗がある方々が多いということです。

そこで、戸籍法には書き込むんだけれども、そこに法的な拘束力を与えるという、いわばハイブリッド案と我々は呼んでいるんですが、そういったものを議論して対案として出しています。これに対して先生からご助言やご意見、中途半端だとかもっとこうしたほうがいいというようなことがあれば、お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします

A小池信行弁護士:
現在の戸籍の制度というのはじつは家制度の時代の戸籍の手続きをそのまま引っ張っています。考えれば非常に緻密ないい制度なんですが、ただ家制度の名残というようなものが戸籍の処理に残っていまして、(嘉田)先生がおっしゃったような家制度からの脱却といったことを考えた場合には、戸籍の仕組みを基本的に改める必要があるのではないかと思っております

ただ、現在の戸籍制度の下での、戸籍と氏が同一でなければならないという原則は、必ずしも固守しなくてもいいわけで、先ほど申し上げましたように、特殊な関係にある親族である親子が、氏が同じであろうが違おうが、ひとつの戸籍の範囲で限定していくという考え方で十分やっていけるのではないかと思っております。

戸籍制度を持っているのは(世界で)ほぼ日本だけで、他の国は身分登録とかもっと簡単な制度を持っているわけです。例えば最終的には韓国がいまやっているような個人登録、個人戸籍のような戸籍の仕組み方というのも、夫婦別姓の採用に併せて検討をする、ということでよろしいのではないか、と思っております。

(書き起こし終わり)

撮影:齋藤周造