【インタビュー(1)】 法律婚から「事実婚」を選んだなべこさんの場合

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別姓に興味をもったきっかけは「違和感」でした

東京都府中市「なべこさん」の場合

--選択的夫婦別姓に興味を持ったきっかけは何ですか?

私は2015年に結婚し、夫の姓に改姓しました。
結婚後、健康保険証や通帳口座の名義変更など、様々な改姓手続をする中で違和感を感じ『絶対に別姓にしてやる』と思いました。

--『絶対に別姓にしてやる』と思ったときの心境を詳しく教えてもらえますか?

改姓手続をして、1つ1つ夫の姓に変えていく中で、自分自身が『自分ではない何か』に変わっていくような感覚になったのを今も覚えています。
それと周りにおめでとうと言われることがとても不可思議に感じました。『自分が自分じゃなくなるような感覚』を『めでたい』とすることはどうなのかな。
でも自分の周囲ではそれを嬉しそうに話す人が多かったので『そう思う自分はおかしいんじゃないか。何でこんなに違和感があるんだろう』と正直不安になりました。

その時に強く『できることなら姓を変えずに生きたかった』と思いました。

もちろん、今の制度で別姓にしようと思ったら、離婚届を出すしかないことは分かっていました。
でも当時の自分は漠然と『近い将来、離婚しなくても夫婦別姓にできるようになるんじゃないか』と思い、旧姓で働き続けることで、自分の『別姓にしたい』という気持ちをごまかしていたように思います。

--『旧姓で働き続けることでごまかす』というのは、どういうことですか?

私達夫婦には子どもがいなかったので、生活の8割は仕事が占めています。

仕事で旧姓を使っていれば、日常で戸籍姓を使うことはほとんどありません。戸籍上の姓は変わりましたが『私の本当の名前は旧姓』と思ってやり過ごそうと思いました。

--仕事で旧姓が使えれば問題ありませんでしたか?

当時の会社では旧姓が使えましたが給与関係のハンコは戸籍姓で、仕事のハンコは旧姓でした。だからいつも2つのハンコを持ち歩いていました。
また病院では戸籍姓で呼ばれましたし、転職後の会社では旧姓が使えませんでした。

その後私は会社を辞めて、大学院に入ることになりました。

大学は旧姓で入学することはできません。
また大学では論文や研究の実績は『姓+名』で登録されます。

以前大学在学中に執筆した私の論文は旧姓で登録されていますし、これから大学院で執筆する論文や研究実績をどの『姓』で登録したいかと考えたとき、自分が生まれたときの姓で登録したいと思いました。

法律婚から事実婚へ

--大学で旧姓を利用するために、どうしたのですか?

離婚届を出して、事実婚に移行しました。

--離婚届を出すことについて、パートナーは反対しませんでしたか?

パートナーは反対も賛成もしませんでした。
私が『今のままじゃ自分らしく生きられない』と伝えたところ
『そうなんだ。分かった。なべこがやりたいと思うことなら反対はしない』と言ってくれました。 むしろ私の家族や友人からのバッシングがすごかったです。家族からは

『籍から抜けるなんて家族じゃなくなる』
『嫁として家の敷居をまたげなくなるよ』
『内縁になると、夫の死後にもめるから』

など、本当にいろいろ言われました。
また友人たちの中で一番多かった意見は
『不倫されたらどうするの?訴えることができないでしょ。』(※1)
でした。

彼女たちのイメージでは事実婚は『正妻の座を捨てること』になり、『夫が他の女性と事実婚の関係を作ることを許容する』ということになるようです。

私は『自分の姓を大事にしたいだけ』と説明しましたがなかなか理解してもらえませんでした。改姓した友人の中には理解を示してくれる人もいましたが、『私も元の姓に戻したいけど、さすがに離婚するのは…』という感じで自分の行動を理解してもらうのは難しいものだと感じました。

”自分の姓”を大事にするために行動を起こす

--『陳情アクション』(※2) の活動を知ったのはいつ頃ですか?

2018年11月にサイボウズの青野さんが原告となった選択的夫婦別姓訴訟の記事に『陳情アクション』の活動紹介があって、そこに『あなたでもできることがあります』と書いてあったのを見つけました。

--『陳情アクション』の活動をよく理解した上で参加したのですか?

いいえ、じつはあまりよく分かっていませんでした(笑)。私は『やらなくて後悔するぐらいなら、やって後悔しよう』という性格なので『とりあえずやってみよう』と思って飛び込むことにしました。

私が事実婚を選んだときに周囲からバッシングを受けたので、他の人がそういうバッシングを受けないような社会になってほしいと思って、事務局長の井田さんに私が受けたバッシングの話を書いてメッセージを送りました。

--初めはどんな活動に参加しましたか?

井田さんから『来週、府中市議会で議員さんに面会するけど、一緒に来る?』と言われて、私も市議会に同行しました。

メンバーは3~4人で、議員さんは4~5人で対応してくれました。
そこで、井田さんがパワポの資料を使って選択的夫婦別姓のメリット、
現行制度のデメリットを説明するのを聞いて『こうやって説明するんだ~』と感心しました。

私はもともと選択的夫婦別姓について知識を持っていなかったので、井田さんが議員さんに説明しているのを聞いて自分も勉強した感じです。

--府中市議会では、どのように陳情が進んだのですか?

府中市では、市民からの『陳情』というスタイルではなく『議員提出議案』として国に意見書を提出することになりました。

私達メンバーが議員さんに選択的夫婦別姓制度に関する情報を伝えて議員さん自身が市議会に提案し、意見書を可決するという方法です。

私も府中市議会の本会議を見に行って『選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書』が可決される瞬間に立ち会いました。

--実際に府中市議会に行ってみてどうでしたか?

市議会の議場で本会議を傍聴するのはその日が初めてで、私の他にも傍聴している人が数人いました。議員さんってもっと高齢の方をイメージしていましたが意外と若い議員さんが多かったです。でも『やはり女性議員より男性議員が多いんだなあ』という印象でした。

あと本会議では他にも様々な議案が出されていて、選択的夫婦別姓に関する議案は一番最後だったので順番待ちが長かったです(笑)。

待っている間、いろいろな議案についての審議を聞く中で『ずっと府中市に住んでいながら、市議会で何をやっているか、私はあまり興味を持っていなかったなあ』と思いました。

--府中市議会で意見書が可決された後は、どのような活動をしていますか?

府中市の議員さんから近隣の自治体で味方になってくれる議員さんを紹介してもらって挨拶に行ったり、議員さん向けの勉強会を開催したりしました。

すでに町田市、調布市、多摩市の市議会から意見書が提出されました。
狛江市でも勉強会を開催しており、意見書採択へ向けて動き出しています。

--その市に在住・在勤でなくても『陳情』が出せるのですか?

『陳情』は市民しか出せないのですが『議員提出議案』という方法であれば、その自治体にメンバーが住んでいなくても大丈夫です。

立川市は『請願』という方法を使いました。

『請願』は、議員さんに『紹介議員』になってもらった上で、市民と議員さんが共同で市議会に議案を提出するイメージです。 今後、青梅市やあきる野市などの議員さんを集めて勉強会を行い、意見書を採択する地方議会を増やしていく予定です。

じぶんが大事にしていること

--『陳情アクション』の活動をする上で、なべこさんが大事にしていることは何ですか?

最近読んだ本の中に
『世界になじめないと思っているのなら、それはあなたの役割がこの世界をより良い場所にすることだからだ。』
という言葉がありました。

私は、この言葉がとても気に入っています。
私なりに解釈すると、『自分が違和感を持ったときは、自分が社会を変えたいと思っている瞬間だ。』ということです。

昔の私は『違和感を持つ自分はおかしいんじゃないか。』と思っていました。でも今は自分の違和感を大事にして、自分が『変だな』と思ったことは『変だな』と言うことにしています。

そして自分だけでなく、他の誰かが『変だな』と思ったときに『変だな』と言うことを許容する社会になってほしいと思っています。

--ありがとうございました。

※この記事は、インタビューを元に再構成しました。

※1 実際には事実婚の場合も法律婚と同様に「扶養義務」や「貞操義務」が生じます。

※2 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」とは全国各地の地方/国会議員に対し、選択的夫婦別姓に関する陳情や勉強会等の活動を行っている市民団体です。別姓を希望する様々なメンバーにより構成されています(公式サイト)。