こんにちは。選択的夫婦別姓・全国陳情アクション神奈川県メンバーのなおこです。
2020年3月25日、神奈川県議会定例会本会議にて、自民党から提出された「選択的夫婦別姓制度についての議論を求める意見書案」が、賛成多数で可決されました。選択的夫婦別姓を求める横浜の会のメンバー8人が中心となり、1年にわたり神奈川県議会に働きかけを行ってきました。改姓や通称使用の苦痛を味わった女性がもっとも多く、自分の氏を守るために事実婚を続けているカップルもいます。25日当日、メンバーのうち3人が議会を傍聴。1人はオンラインの生中継を固唾をのんで見守り、可決の瞬間を見届けました。
神奈川県議会で可決された意見書
意見書可決に至るまでの陳情アクションの経緯を報告します。
活動の場は横浜市議会から神奈川県議会へ
昨年2019年3月19日に、選択的夫婦別姓を求める横浜の会のメンバーが横浜市議会に働きかけた結果、「選択的夫婦別姓制度についての議論を求める意見書」が全会一致で可決されていました。公明党にご相談し、自民党にも理解を求めて決まった文面は、残念ながら「夫婦別姓制度導入による社会的影響へのリスクも懸念されていることから~」といった誤解に基づく記述もあります(日本以外すべての国は夫婦別姓で結婚できます。選択制であるかぎり困る人はおらず、何のリスクも証明できていません)。決して100%私たちが納得できる内容ではありませんでした。
それでも国会で審議されなければ何も始まりません。当事者の働きかけによって「横浜市議会は全会一致で、選択的夫婦別姓について国会で議論することを求める」という意見書が可決されたことは、大きな前進でした。この成功体験から、メンバーで話し合い、「次は神奈川県議会に働きかけよう」と決めました。
当初は、議員の人数も多く、具体的にどう進めるのが良いのか不安だらけでしたが、事務局や他県のメンバーからのサポートもあり、2019年6月9日に自民党の県議会議員、6月16日に横浜市の公明党議員、8月8日に再び自民党県議会議員の皆様と面会。まずは選択的夫婦別姓の議論について県議会議員のみなさんがどのような認識を持っているのか、意見書を採択させるためにはどう進めればよいかをご相談しました。
超党派の県議会女性議連が可決までアシスト
当初、自民党内部には「旧姓使用時の困りごと等は理解するが、党として選択的夫婦別姓制度へ賛成の姿勢を取ることは難しい。(たとえ“選択的”であったとしても)」という意見が多かったといいます。「保守派の議員の中には、別姓制度=事実婚、そもそも婚姻制度に反対していると捉える議員が多い」と、誤解偏見も多い状態でした。そんな中、私たちの声に応えて立ち上がって下さったのが、女性議員の皆様でした。9月20日に、今回の採択にご尽力いただいた神奈川県議会女性活躍推進議連の女性議員のみなさんと初面会。それ以降、ずっと伴走を続けてくださいました。
自民党・鈴木けいすけ外務副大臣の後押しも
年が明けた2020年1月29日には、かねてから選択的夫婦別姓賛成で、力強く私たちの活動を後押しして下さっている神奈川県選出の自民党・鈴木けいすけ外務副大臣に国政の動向を伺い、神奈川県議会での可決に後押しをお願いしました。鈴木議員(中央)がご自身のサイトで紹介してくださっています。鈴木議員の左隣が神奈川県の新井絹世県議です。
自民党が意見書を提出
その後も、メンバーで陳情書案を準備していたところ、神奈川県議会女性活躍推進議連から突然、朗報が舞い込みました。「3月25日の本会議で自民党から意見書を提出する」といういうのです。共産党でも選択的夫婦別姓の法制化を求める意見書が出されたので、その対案として、自民党から提出するというものでした。
そしてそのお言葉通り、自民党・しぎた博昭議員ほか12名から提出された「自民党案」での意見書が無事、賛成多数で可決されました。
議会終了後には、神奈川県議会女性活躍推進議連の女性議員のみなさんに再度、これまでのお礼をお伝えしました。
神奈川県議会の議場にて お世話になった神奈川県議会女性活躍議員連盟の皆様とガッツポーズ(左から公明党・西村恭仁子議員、自民党・新井絹世議員、自民党・神奈川県連女性議員局局長の小川くにこ議員とメンバー)
小川議員より、「みなさんの意見も吸い上げて意見書を作成したつもり。新井議員が自民党の反対議員に説明をして、意見書提出につながった。一歩前進だと思う」と伺いました。
西村議員からは、「2月14日の公明党本部の法改正要望書提出に立ち合い、いろいろ勉強させてもらった」とのことでした。
メンバーからは、意見書提出へのお礼と、あくまで法制化を望んでいるということ、旧姓使用は問題の解決にならないことをお伝えしました。
当日は複数のメディアが取材してくださり、当事者の声をお伝えしました。
議会後にメディアからの取材を終え、ほっと一息のメンバー
神奈川新聞で速報が出ました。
本来は「法制化を求める意見書」が全会一致で可決されることがベストではありましたが、自民党と公明党が国会で政権運営をされています。継続審議や不採択となるより、たとえ「議論を求める意見書」であっても、自民党から意見書案が提出され、採択されることで、一歩前進できたのではないかと思います。
意見書提出のきっかけを作って下さった共産党や、今回の意見書可決に賛成してくださったすべての議員の皆様にもお礼を申し上げたいです。
県議会という大人数の議員を相手に、最初は不安だらけでしたが、メンバーで密に連絡を取り合い、自分たちの声を上げることによって、やっと可決につながりました。今後も、アクションが全国に広がり、より多くの都道府県で意見書が採択されることを期待しています。
_______
【選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長 井田奈穂より】
都道府県議会で選択的夫婦別姓「推進」の立場での意見書可決は、2001年千葉県議会、愛知県議会、2010年岩手県議会のあと、私たちの働きかけによる2019年三重県議会、大阪府議会、2020年滋賀県議会に続き、7例目だと把握しています。
各地の意見書可決状況
https://chinjyo-action.com/area/
横浜県議会の意見書は、横浜市議会での意見書をの内容を踏襲し、「選択的夫婦別姓 制度についての議論 を求める意見書」。選択的夫婦別姓にあたかもリスクがあるような書き方ではあり、やはり当事者としては、決して100%納得の行く内容ではありません。しかし神奈川県民メンバーの粘り強い1年に及ぶ働きかけで叶ったものであり、メンバーを誇りに思います。
何よりこれが、自民党主導で可決されたとなれば大きな進展となります。新井絹世県議はじめ女性議連の皆様、鈴木けいすけ外務副大臣にも心から感謝申し上げます。
一方、東京都議会は、2019年6月に私たちの請願が賛成多数採択されたものの、意見書は全会一致ルールのため自民党都議団の反対により文面が決まらず引き伸ばしにあっており、可決していません。
国政の自民党での法制化の動きは加速しています。鈴木けいすけ議員、井出ようせい議員にもご協力いただいて開催した2020年2月14日超党派有志勉強会、稲田朋美議員のお力添えで開催した3月6日自民党本部での勉強会などでも、すでに多くの自民議員が賛同を示してくださっています。
今一度、東京都議会自民党にも、昨年来の引き伸ばしの方針を見直す機会とし、速やかに意見書可決していただきたいと強く求めていきます。