ギリシャの決断:1983年「夫婦の姓」に大変革!

海外の結婚&姓の選択事情

こんにちは、旧姓利用中男性研究者です。今回はギリシャについてお話したいと思います。

ご存知のとおり、夫婦が同姓と法的に規定されている国は日本だけで、日本を除くすべての国では、婚前の姓をそのまま用いる選択肢が認められています。

では、ギリシャはどうかというと、夫婦別姓とハイフンで結んだ複合姓のいずれか選択することができます。しかし、実はギリシャは伝統的には昔は夫婦同姓の国でした[1]。現在のギリシャの制度では婚姻時に配偶者の姓に改姓することは認められていません。一体全体、どのような変化がギリシャにあったのでしょうか?

ギリシャが夫婦同姓の国から夫婦別姓の国に変わったのは1983年のことです[1][2][3]。それ以前は伝統的に婚姻時に女性が男性の姓に改姓していたのですが、1983年に婚姻時に改姓することを禁じる法改正を行ったのです。

なお、この時点では複合姓の選択肢もありませんでした。ものすごいドラスティックな変化ですね。これまで、過去に夫婦同姓が規定されていたすべての国(日本を除く)でそれを是正するために法改正がなされてきましたが、そのほとんどの国では、別姓の選択肢が同姓の選択肢に加えられる形で改善されています。しかし、当時のギリシャ政府は、そのような形で選択肢を追加しても社会的な圧力は残る可能性があると考え、完全な夫婦別姓への転換を行ったのだそうです[2]。

この変化はギリシャの女性に大きな影響を与えました。Guardianの記事[2]によれば、まさにその変化が女性の大学進学や社会進出を大きく後押ししたのだそうです。(逆に言えば、同姓の規定のみしかない日本の制度は、明らかに女性の社会進出を阻害していると思います。) そして、現在のギリシャ女性のほとんどは、この名前が変わらない、という状況を当たり前のことと感じ、ほとんど何の問題も感じていない、とのことです。[2]

では、多少問題があるとすれば、学校などで友達の母親に電話をかける際に「〇〇君のお母さんですか?」と聞く際に少し面倒かもと感じる程度で、それも誰も問題にしていない、といったことが紹介されています。また、一部の国を夫婦で旅行する際には夫婦であることの証明が必要となる問題がありますが、それについても婚姻証明書を発行しており問題ない、としています[2]。

ただ、このようなドラスティックな変化は保守的な人々には少し衝撃があったようで、2008年に保守派の政権が巻き返す形で複合姓も認めるようになりました[1][2]。やはり、このようなドラスティックな変化は反発も大きい、ということでしょう。

ところで、そのようなものすごいドラスティックな夫婦の氏の変更を過去行った国がギリシャ以外にもう一つ知られています。どこでしょうか?

日本です。日本は明治維新後、当初、1876年の「太政官指令」で夫婦は別姓が規定されました[4]。その理由としては江戸時代の士分の伝統にしたがった、との説が有力なようです。しかし、それが1898年に明治民法が成立すると同時に、逆に夫婦は同氏が規定されました。これもギリシャに負けず劣らず、というか全く同じレベルでドラスティックですね。その後、戦後に男性が女性の姓に改姓する選択が認められる変更などもあったものの、それ以来日本は一貫して同姓以外の選択肢を(国際結婚の場合を除き)認めていません。

私としては、(明治民法成立時にどうだったかはともかくとして)今日まで100年以上続いた同姓も、その前の士分の伝統であった別姓もいずれも日本の伝統だと思います。当時、ドラスティックな変更でシステムを変更してしまった日本ですが、伝統という意味でも、変更するにしても選択を可能とするような制度に変更しておけばよかったのに、と個人的には思ったりもします。1900年以前の当時の感覚では、あまりそのような感覚は持ちえなかった、ということなのかもしれません。

しかし、今はもう平成も終わりに差し掛かり、2度目の東京オリンピックも予定され、大きく時代は変わっています。今すぐ、選択的夫婦別姓を導入し、時代にあわせた夫婦の氏の制度を確立することはグローバル時代の日本の責務だと思います。日本の世界における発展のためにも、一刻も早い選択的夫婦別姓の実現を祈念いたします。

参考文献
[1] Carole Hough (eds), “The Oxford Handbook of Names and Naming”, Oxford University Press, March 21, 2016.
[2] Heather Long, “Should women change their names after marriage? Consider the Greek way”, The Guardian, October 16, 2013.
https://www.theguardian.com/commentisfree/2013/oct/06/women-change-name-after-marriage-greece
[3] Davaki, Konstantina, “The Policy on Gender Equality in Greece. A Note for Directorate General for Internal Policies”, Policies Department C: Citizens’ Rights and Constitutional Affairs, Gender Equality, European Parliament, Brussels, 2013.
http://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/note/join/2013/493028/IPOL-FEMM_NT%282013%29493028_EN.pdf
[4] 井戸田博史『夫婦の氏を考える』世界思想社、2004年。

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