請願採択から丸2年、東京都議会で「選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書」が可決

自民党議員の皆さんと可決の記念写真

東京都議会本会議で2021年6月7日(月)、自民党・公明党が提出会派となった「選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書」(別添)が可決されました。

これは「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長・井田奈穂が請願者となり、2019年6月19日に採択された「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書の提出に関する請願」の願意に基づく意見書です。請願は賛成多数で決まりますが、意見書は全会派賛成が通例のため、2019年当時は自民党のみ反対で意見書がまとまらず、丸2年が経過してしまいました。しかし都内のメンバーが何名も地道に働きかけを続けた結果、都議選を目前にした最後の定例会でようやく自民党が理解を示して下さり、意見書が国に送られました。

選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書

 国の法制審議会は、平成8年に婚姻制度等の見直しを行い、民法の一部を改正する法律案要綱を答申し、選択的夫婦別姓制度の導入を提言した。
 また、最高裁判所は平成27年12月、民法の夫婦同姓規定を合憲とする一方で、「制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」と指摘した。
 その後、令和2年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める。」としている。
 この間、都は女性の活躍を推進するため、男女が共に働きやすい職場づくりなどに向けた各種対策を進めており、東京都議会でも、令和元年第2回定例会において、「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書の提出に関する請願」が採択された。
 現在、国において、選択的夫婦別姓をめぐる議論が活発に行われている。この機を捉え、国の基本である戸籍制度を堅持しつつ、選択的夫婦別姓制度に関し、その意義や必要性並びに家族生活及び社会生活への影響について、社会に開かれた形で議論を進めていく必要がある。
 よって、東京都議会は、国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓制度に係る国会審議を推進するよう強く要請する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 令和3年6月7日

東京都議会議長 石川良一

衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 総務大臣 法務大臣 宛て

東京都議会可決以前に確認されているだけで選択的夫婦別姓推進の意図での意見書可決は全国で214件。そのうち73件が2018年11月以降、全国にいる当アクションのメンバーが働きかけたものでした。

※数は当アクション調べ、2021年5月14日現在

全国各地での意見書可決状況

74件目として首都・東京から、自民党起案による「国会及び政府に対し、選択的夫婦別姓制度に係る国会審議を推進するよう強く要請する」意見書が可決されることは、全国に対しても大きなインパクトがあると考えます。

「自民党に会ってもらうことすらできない」状態からのスタート

私たちが働きかけた最初の意見書が可決したのは井田の地元・中野区議会、2018年12月議会でのこと。翌2019年2月から都議会各会派への働きかけを開始しました。中野区選出の都議、高倉良生議員(公明党)荒木ちはる都議(都民ファーストの会)の全面バックアップ、また小山くにひこ都議(都民ファ)が中心となって動いて下さり、自民党以外の賛成多数で請願採択を叶えてくださいました。所属都議124人中101人賛成という圧倒的な「法制化すべき」という声でした。

2019年当時の請願採択のレポート

もちろん都議会自民党にも3月からアポイントをお願いしていました。しかし請願が採択されるまで一度も面談に応じてもらえず。採択後6月以降も電話、FAX、メール、都議会の控室にも足を運ぶなどして面会を依頼したものの、議員からの返信は一度もありませんでした。

それでも都民のメンバーが、それぞれの地元選出の都議に何度もアポイントを試みました。10分でもいいから会ってと事実婚カップルが訪れたものの、ろくに話を聞いてもらえず数分で帰されたり、辻立ちを見つけて「会って自分の困りごとを聞いてほしい」と訴えたり…。しかし当時は、自民党東京都連からも「反対せよ」の指示があったとのこと。都議会自民党政調会事務局にも直談判に行った結果、初めて会っていただけたのは、次の9月議会で意見書が審議に入る9月11日でした。

自民党との初面談前後のツイッター投稿

清水孝治政調会長代行菅野弘一副幹事長(役職はともに当時)が当事者の困りごとを「初めて聞いた」と理解を示してくださったものの、意見書提出は見送られることに。自民党会派での勉強会の打診にも回答は得られませんでした。

2019年9月の自民党への陳情
2019年9月11日都議会自民党への陳情。豊田悦子氏(メルボルン大学アジア研究所上級講師=手前=)や、青野慶久社長(サイボウズ社=Web参加=)含むメンバー8名で望まない改姓の不利益、事実婚当事者の不安、研究者や経営者の声を伝えた。

事態が動いたのは、2021年1月から。新メンバー・成宮八重子が再び都議会自民党に働きかけをスタート。

都議会自民党の政調会事務局にも選択的夫婦別姓関連のニュースを送るなどして、正式に都議会自民党として当事者の声を聞いていただきたいと訴え続けました。事実婚カップルが2月20日、地元・北区選出のやまだ加奈子都議と面談。山田議員は北区議時代に区内メンバーの陳情を受けてくださったことがあり、理解を示して下さいました。

続けて3月30日、小宮あんり都議、山田都議、林あきひろ都議がメンバー5名と面談の機会を下さいました。各々の困りごとに耳を傾けてくださり、2019年の請願では会派がまとまらず、反対せざるを得なかったことに小宮都議から謝罪がありました。2020年の10月北区で意見書が可決した時、相次ぐ意見書可決を受けて自民党東京都連が反対を撤回し、「判断は各議会に任せる」と変わったことを聞いていたので、その旨をご説明。特に都議会では改選前の6月定例会がラストチャンスであるとの私たちの訴えに、3都議は「自分たちは賛成だが、様々な意見を聞いて決めていかなければならない。合意形成ができるよう調整させてほしい」と言って下さいました。

2021年3月30日自民党会派の陳情
2021年3月30日都議会自民党と面談。一番左:林あきひろ都議、中央の水色のジャケット:小宮あんり都議、右から2人目の白いジャケット:⼭⽥加奈⼦都議。陳情アクションのメンバーは5名参加し、それぞれの困りごとを相談。

続けて4月9日、都民ファーストの会の9名の都議(荒木ちはる代表増子ひろき幹事長小山くにひこ政調会長白戸太朗都議つじの栄作都議木下ふみこ都議木村基成都議藤井あきら都議清水やすこ都議)が面談に応じてくださり、全面的に賛成であることに変わりなく、小池百合子都知事への要望書手交も確約してくださいました。「議員は結果だ。自分が賛成なら党内も支持層も説得すべきだ」と力強く言って下さったことが心に残りました。

都民ファーストの会面談
3名とお伺いしていたのに、当日は9名もの都議が集まり、メンバーが報告する旧姓使用の困りごとに理解を示して下さいました。

そのおかげで4月22日、小池都知事に選択的夫婦別姓の法改正を知事会などから提言していただきたい旨、3団体合同で要望をお渡しできました。

小池都知事への面談
選択的夫婦別姓・全国陳情アクション、選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会、一般社団法人日本跡取り娘共育協会の3団体で知事会からの法改正提言を要望

4月13日、5月17日に再び自民党の小宮・山田都議にお招きいただき、自民党会派から意見書の提出を目指せることに。「会派内には反対の議員もいる。自民党も他会派もどうにか全員が乗れるような文案にしたい」と「国会審議を求める」初案を提案してくださいました。そこに公明党が調整を入れてくださって、共同提案とすることに。

ただ、ほかの会派との間で文案が割れてしまえば意見書は決まりません。自民・小宮都議、公明・高倉都議、都民ファ・荒木都議と密にご相談しながら、井田から全会派に対して自民党案にご賛同をいただけるようZoom面談やメールでお願いをすることにしました。すると続々と「活動に敬意を表します。賛成します」(共産党・河野ゆりえ都議)、「賛同する以外に何かお力添えすることはありますか?」(東京みらい・森澤恭子幹事長)、「可決に向けてもちろん協力します!」(自由を守る会・上田令子代表)といったありがたいお申し出が相次ぎました。

都民ファースト・荒木代表は6月2日の代表質問で過去の請願採択に触れ、「都議会としても、形だけではない中身の伴った実行的な意思表明などを通じて国に法制化を強く求めていくべき」と述べてくださいました。

荒木ちはる都議代表質問

ご自身も望まない改姓のご経験のある田の上いくこ都議が中心となり、できるだけ法制化を求める内容になるよう、都民ファ修正案を自民党に申し入れて下さいましたが、「選択的夫婦別姓制度の導入は急務」「法制化を求める意見書を提出すべき」との表現が、今回まとめようとしている意見書の趣旨(都議会として賛否を示すための意見書ではなく、法を所管する国会での審議を求める意見書)にはそぐわないと判断され、自民党では最高裁の判決文など、一部を採用するにとどまりました。

都民ファースト修正案

これに対し、一時は都民ファーストから対案を出すことも検討されたと田の上都議に伺いましたが、井田から「今定例会がラストチャンス。どうか賛同していただけないか」とお願いし、全会派一致での委員会採択に漕ぎ着けることができました。

私たちとしては請願の願意であった「法制化」を文面に入れられなかったのは心残りではありますが、法改正のキーとなる自民党から強く国会審議を求めて下さったことは大きな前進と考えます。難しい自民党内調整に骨折って下さった小宮・山田両議員、そして賛成して下さった全会派の皆様に心から感謝をしつつ、2年越しの可決の本会議当日を迎えました。

自民党から「この制度に関する議論が深まっていくことを期待」と討論

迎えた6月7日の本会議当日。2番めに党を代表して討論に立った田村利光都議から、「本定例会では、自民・公明が提案した『選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書』案が全会派一致のご意向をいただき、可決されました。この制度に関する議論が深まっていくことを期待するものであります」と言及して下さいました。

自民党討論

また、東京みらいの森澤恭子都議も討論の中で、以下のように制度の意義について触れて下さいました。

無所属東京みらい討論

選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書」については、都議会として、国に、選択的夫婦別姓制度の議論を進めて欲しいという総意を示すことは重要であり賛同します。結婚によって姓の変更を強いられることは、それまでの人生で築き上げてきた様々なつながりやキャリアなどを途切れさせる可能性があり、その心理的、社会的な負担について、早急に取り除くべきであると改めて申し述べておきます。

そして意見書は無事可決。この日、同じく同性パートナーシップ制度に関する請願の趣旨採択も行われ、「東京都にパートナーシップ制度を求める会」の皆さんと喜び合うことができました。小池百合子都知事が制度策定に前向きな答弁をされたとのこと。配偶者の医療合意や相続など、法律婚できない不安は私達と共通であり、性別を問いません。結婚したいすべてのカップルが、法的な枠組の中で家族として安心して生活できる社会を望みます。

パートナーシップ制度を求める皆様と
一番左:「東京都にパートナーシップ制度を求める会」竹内勝人さん、2人飛んで山本そよかさん、松中権さんと一緒に

閉会後、会派控室にお礼を申し上げに回りました。まずは提出会派から!

自民党

今回党内調整に骨折って下さった小宮あんり都議の「今後の国家での審議が重要です。一朝一夕には難しいものと思いますが、開かれた公平な審議を求めて参ります」という言葉にジーンとしました。ずっとお会いしたかった髙島直樹東京都支部連合会幹事長山﨑一輝幹事長も出迎えて下さり、「決まって良かったですね」「国会の議論も進めないとね」と声をかけて下さいました。

自民党控室
左から2人目・山﨑一輝幹事長、小宮あんり都議、やまだ加奈子都議

公明党

最初からずっとお世話になった高倉良生都議だけでなく、2年前の請願採択に尽力して下さったまつば多美子都議栗林のり子都議にもお礼をお伝えできて胸が一杯になりました。

公明党控室
左から3人め:まつば多美子都議、高倉良生都議、栗林のり子都議

都民ファーストの会

「ここからだから!法律が決まらないと意味がないから、これからもできること、応援するからね」と荒木ちはる代表の力強い言葉がありがたかったです。意見書の内容をなんとか進めようとして下さった田の上いくこ都議にも直接お礼がお伝えできて一安心でした。

都民ファースト控室
左から3人:荒木ちはる都議、田の上いくこ都議、龍円愛梨都議、右から2人目:藤井あきら都議

共産党

大山とも子代表和泉なおみ幹事長以下、女性議員の皆様が「良かったですねー!」と迎えて下さいました。Zoomで陳情を受けて下さった河野ゆりえ都議は今回で退任されるとのこと。最後にお礼が言えてよかったです。別姓婚や旧姓使用の困りごとに皆さんが口々に理解を示して下さいました。

共産党控室
左から3人め:斎藤まりこ都議、とや英津子都議、河野ゆりえ都議、大山ともこ団長

立憲民主党

「賛成は当然ですよ」「2年やっとですね」と声をかけて下さった議員の皆様。地元議会での進捗などもご相談できました。ありがとうございました!

立憲民主党控室
左から3人め:石毛しげる都議、5人目:西沢けいた都議、藤井とものり都議、栗下善行都議

無所属 東京みらい

森澤恭子幹事長は、こちらの記事で別々に取材を受けたことがあり、政界における旧姓使用のご苦労に共感していました。今回も賛成の意図で討論してくださり、「個人的にも国で早期に、選択的夫婦別姓制度が実現することを心から願うばかりです!!」とのこと。「2年粘り強く頑張った成果ですね」と労ってくださり、うれしかったです。

東京みらいの森澤都議との写真
無所属東京みらい・森澤恭子都議(右から2人目)と

無所属 自由を守る会

上田令子都議にお礼を申し上げると、「当たり前のことがなんで国で決まらないのかね」と一言。都の成果をもって国に働きかけていきます!

自由を守る会控室
上田令子都議(右から2人め)と

このほか、無所属(都議会生活者ネットワーク)、無所属(東京維新の会)、無所属(新風)の控室にもお邪魔したのですが、ご不在で残念でした。

2年分の思いを形にして全会派一致で国に送って下さったすべての都議会議員の皆様、ありがとうございました!

都議会議会棟の前で
2年前と同じ場所で。東京都議会の意見書が決まるまで何人も何人も、メンバーが働きかけました。皆やったねー!