2019年6月14日に茨城県取手市議会で、7月1日に牛久市議会で、相次いで選択的夫婦別姓の法制化を求める意見書が採択されました。たった3ヶ月前まで「請願」という言葉すら知らなかった普通の夫婦が、どのようにして2つの意見書の採択に至ったのか、その経緯をご報告します。
事実婚26年目の決断。「待っているだけではダメなのだ」
私たちが結婚したのは26年前、夫婦別姓の機運が高まっていたときでした。ともに改姓したくなかった私たちは、事実婚で法制化を待つことにしました。ところが民法改正は実現しないままでずっと待ちぼうけとなり、2015年に最高裁が「夫婦同姓は合憲」と判決を下した際には大きく落胆しました。2019年3月、青野さんの裁判はきっと勝訴まちがいなし、「歴史的瞬間に立ち会おう」と息子を誘って母子で張り切って東京地裁まで傍聴に出かけましたが、判決は悔しい結果で、ものの10秒で終了。そのときに「待っているだけではダメなのだ」と気づいたのです。地裁のロビーで聞いた青野さんの「全国の地方議会で皆が頑張っているのが力になる」という言葉に、陳情アクションへの参加を決めました。
「ぜひ実現しましょう」議員さんたちの力強い言葉
陳情アクションのメソッドに従い、二人で地元牛久市の公明党の藤田議員に相談すると、すぐに公明党市議の勉強会を設定してくれました。そこには牛久市議3名に加え、隣の取手市からも市議2名が参加していました。私たちの別姓についての説明に、「どこにも違和感はない。当然の要望ですからぜひ実現しましょう」と全員の意見が一致。なんと「取手市議会の請願締め切りは明日なので、すぐに出しましょう」という思いがけない展開となりました。取手市の公明党市議お二人の活躍により、会派を超えて8名が紹介議員に名を連ねてくれ、トントン拍子で意見書採択に至りました。
牛久市の方でも、藤田議員が力を尽くしてくれました。難しいかと思われた自民系会派については勉強会を設定し、困りごとや思いを直接説明させてもらうことができました。その結果、「今の時代、仕事をしている人なら誰でも改姓の苦労は分かるよね」と理解を示してもらえ、党の公認を受けていた議員さんお一人が採決に際して退席されたことにより(嬉しいご配慮でした)、なんと全会一致での採択という思いがけない結果を得ることができました。
取手市議会だより
私たちがもうひと頑張りしたのは、報道発表です。せっかく採択を実現しても、いかんせん茨城の小さな市議会ではほとんど注目されません。「採択2件」という数だけで終わるよりはと、報道機関へのお知らせを作成し、記者クラブへ“投げ込み”を行いました。その結果、取手の採択時に4社、牛久の採択時に2社が新聞の茨城県版に掲載してくれたので、より広く県民にアピールすることができたのではないかと思います。
朝日新聞 茨城)夫婦別姓制度法制化へ意見書可決 取手県内2例目
毎日新聞 取手市議会「選択的夫婦別姓導入を」 意見書可決 /茨城
初めて市議会というものに足を踏み入れた私たちがここまでスムーズに進行できたのには、2議会とも議員構成や採択基準などが好条件であったことが第一ですが、他に2つの要素があったと思います。
まずは陳情アクションのシステムが、事務局長の言葉どおり「ど素人でもできる」仕様になっていたこと。メソッドも文書見本も揃っているうえ細かくアドバイスも受けられたので、不安なく進めることができました。
もう一つは、夫婦別姓がじつは広く皆が抱えている問題であったことです。なんと出会った女性議員さんたちの多くが、「私もじつは…」という話を始めました。曰く「できれば改姓したくなかった」「改姓手続きが大変だった」「議員名は通称だ」「再婚時に子どもの姓で悩んだ」「親が別姓だ」「子どもが通称使用で苦労している」。そして、「声を上げてくれてありがとう」と言ってくれたのです。さらに、取手での採択を新聞で読んだというご年配の女性から「50年前から別姓を望んでいる」との応援のハガキが届きました。夫婦二人だけでの請願でしたが、この実現を願っているのは二人ではない、議員さんも、そしてその後ろにいる多くの市民も同じだという実感を得たことが、私たちと議員さんを動かす大きな力になりました。
茨城県南地域の公明党市議さんとの勉強会
すでにつくば市で意見書採択を実現させたメンバーとトリオを組んで、私たちは今後も茨城県南地域での請願を続けていきます。私たち自身のため、子どもたちの世代のために選択的夫婦別姓を実現することを目標に、「ど素人」なりの努力をしたいと思います。
意見書採択に関わってくださった2つの市議会のすべての議員さんに、中でもすばらしいネットワークで私たちの活動を支えてくださっている藤田尚美議員はじめ公明党議員の皆様に、そして活動の場と方法を与えてくれた「陳情アクション」と井田事務局長に、心から感謝します。
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