自民党の保守議員は、「選択的夫婦別姓に反対」というのが定説でした。
しかし2018年11月28日、橋下徹元大阪府知事がナビゲーターを務めるAbemaTV「NewsBAR橋下」で自民党の元防衛大臣・稲田朋美衆議院議員が賛成に転じたことを公表しました。
以下動画から、該当部分を書き起こした内容です。
AbemaTV「NewsBAR橋下」#8 ゲスト:稲田朋美(衆議院議員・元防衛大臣)(18/11/29)
橋下徹(以下、橋下):選択的夫婦別姓は賛成?
稲田朋美(以下、稲田):私はずっと反対の立場だったの。選択的夫婦別姓。
それは子どもと親が姓が違うのがどうかという考えから。
でもね、そうすると通称(旧姓のこと)を認めていく、通称を今度法制化するってことになってくると、法制化した途端に「2つの名前を持つ女」「2つの名前を持つ男」が出てくるわけですよね。通称と戸籍と。両方のね。
それは私はすごく社会を混乱させると思ったのが一つと。
人生100年時代になって、60や65過ぎて結婚する人もいるじゃない。
そうしたときに、私はいま夫いるけれど、例えば結婚(再婚)するとしたら、自分の今の名前を使っていきたいと思うんですよね。なので、時代とともにそういった選択肢も広がるべきなんじゃないかと思うんです。
橋下:「名前が違うと家族の一体性を壊す」とか保守の議員は言うんだけどね、うちは親と名前が違ったからね。再婚の父親だから。だから僕は前の父親の名前を引き継いで、うちの母親と再婚したお父さんが別の名前だった。
全然、なーんにも問題ない。
稲田:名前が一緒だったらとか、なんだったらとか、憲法を変えたからとかで、家族が仲良くなるとかは違うと思う。
橋下:自民党のいわゆる保守と違うじゃない(笑)「馬鹿野郎」っていってくださいよ「俺は保守だ」とか言っている議員。
稲田:保守ですよ私は。そういう形式的なものじゃないよねってことでしょ(笑)。
稲田議員の賛成表明は、時代に即した心ある判断だと感じました。
ちなみに安倍晋三首相も、実弟である岸信夫議員が「岸」の姓を継ぐために養子縁組をしたため、兄弟別姓で育ったことはよく知られています。「家族で姓が違うと一体感が薄れる」という主張をされる議員は、まず安倍首相に聞いてみると良いかもしれません。「あなたのご家族は一体感なかったですか?」「なにか問題がありましたか?」と。
選択的夫婦別姓はイデオロギーではありません。
世界広しといえど、日本人同士の結婚だけに義務化されているのが夫婦同姓。それが原因で生じる「生活上の困りごとを解決する手段」が、夫婦同姓に加えて夫婦別姓も選べるようにする「選択制」です。
これを「政争の具にすべきではない」と、すでに多くの自民党議員さんも賛成を表明されています。
野田聖子議員は長年、選択的夫婦別姓の法制化を願って活動してこられました。
自民党が少子化を加速させた〜自民党・野田聖子衆院議員インタビュー〜(日経ビジネス)
2017衆院選 候補者アンケート(朝日・東大谷口研究室共同調査)によれば、野田議員のほかに選択的夫婦別姓に「賛成」を表明した議員は木村弥生議員、工藤彰三議員、鈴木馨祐議員、鈴木憲和議員です。
河野太郎外務大臣は2001年から賛成を表明。インタビューでこう述べています。
例えば選択的夫婦別姓についてですが、2001年11月16日に「僕は、選択的夫婦別姓に賛成です」と明言しています(こちら参照)。これからは一人っ子同士の結婚も増えていく。既婚女性が職業上、責任ある地位につくことも増えいく。別姓が認められないことが要因となって事実婚が増えていくことは、好ましいことではない。だから、選択的夫婦別姓には賛成だと言います(こちら参照)。
石破茂議員は、選択的夫婦別姓賛成を行政書士会の講演などでも表明されていますが、2018年10月、選択的夫婦別姓訴訟の弁護団と会談をされ、改めて賛成を表明されました。
石破茂先生にお時間を取っていただきました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆。#別姓チャレンジ #選択的夫婦別姓#第二次夫婦別姓訴訟 #夫婦別姓確認訴訟 pic.twitter.com/E4zsqzjzsf
— 別姓訴訟を支える会 (@bessei2018) 2018年10月21日
「別姓を認めることで家族の絆が壊れるとは思っていない」
「反対するひとは誰?」など、たくさん意見交換をされたそうです。
福田康夫元首相も、選択的夫婦別姓について、少子化、労働力減少時代においては必要な施策であると述べられています。
産経新聞も報道していますが、朝日新聞には発言が詳しく載っていました。
福田元首相:前向きの女性対策を考えていかなければいけない。たとえば夫婦別姓制度、これは15年ぐらい前に議論した。
あの頃はね、議論はしたけども、日本人はそういうことはダメなんだと一蹴されましたけど、しかし、こういうことも女性が働きやすい環境をつくるということになれば必要かもしれない。
このことは、国会議員が決めなきゃいかんですよ。国会議員が議論して、どういう方法がいいのか国民に示して、国民の賛否を仰ぐ。大事なことは国会で議論して、お示ししないといけない。
第151国会で「選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願」が20件も出されましたが、ここに自民党で唯一、「紹介議員」として名を連ね、バックアップしたのが土屋品子議員でした。土屋議員は自民党の女性活躍推進本部長として、2017年6月20日と2018年6月26日の2回、「実家の名前を継承したい姉妹の会」を対象に「家族制度のあり方等についてヒアリング」を実施しています。
ここまで来ると、一体「だれがどんな理由で反対しているのか」が気になります。なにしろ、現首相は家族で名字が違うご家庭で育ち、元首相や防衛相、外相、女性活躍推進本部長を務めた幹部も、上記のようにおっしゃっているのが自民党なのですから。
「保守だから選択制にも反対」という議員は、最新の世論調査を見ているのでしょうか?
「家族の名字が違っても、一体感(きずな)に影響がないと思う」国民のほうが圧倒的に多いのですが。
福田元首相のおっしゃる通り、ぜひ自民党主導で国会で話し合い、国民に示していただきたいものです。この国の婚姻制度の形骸化・非婚・少子化をどのようにするつもりなのかを。
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