選択的夫婦別姓制度の導入に懸念を持つ方、反対される方のご意見として
「夫婦が別姓だと、子どもはいずれかの親と別姓になる。それは『子どもがかわいそう』『子どもに好ましくない影響を及ぼす』」という考えがあります。
もちろん、選択的夫婦別姓が制度化されても「家族は同じ名字が望ましい」と考え、夫婦同姓を選ぶのは問題ありません。世間で議論されているのは【選択的】夫婦別姓だからです。
しかし、その考えのもとに夫婦別姓という【選択肢】を認めると「伝統的な家族のあり方が失われてしまう」と考え、強く反対される方がいます。極端な場合は「犯罪が増えるのでは」という意見まで存在します。(※1)
国会議員・地方議員の中もそういった考えは根強く存在し、なかなか法改正に向けた議論が進まない原因の1つとなっています。私たちは陳情アクションの活動を通して粘り強く説明し、ご理解を求めてきました。
今このページをご覧くださっている皆さまにも、ぜひ「夫婦別姓の家族がいたからといって、問題は起こらない」ということを知っていただければと思います。
夫婦別姓・親子別姓の家庭は既にこの世の中に存在しています
夫婦別姓を認めたら、夫婦別姓という「新しい」タイプの家族が出現して、自分の生活や世の中を混乱させてしまうのでは・・というイメージを持たれて、変化に戸惑いを感じている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、もう既に、日本国内にも夫婦別姓の家庭はたくさん存在していることを知っていますか?
1.国際結婚の夫婦とその子ども
日本国籍を持つ日本人と、外国人が結婚した際は原則別姓となります。
ただし、「配偶者の姓に改姓し、夫婦同姓にしたい」と考える日本人は、外国人の姓に改姓することもできます。
(例:東京花子さんがMr.スミスさんと国際結婚。東京花子さんがスミス花子さんに改姓)
最近は決して珍しくなくなった国際結婚ですが、2018年の国際結婚(夫・妻いずれかが外国籍)件数は、約2万2千組。ピークだった2005~2007年には4万組を超えていました。(平成30年人口動態調査より)
また、2015年時点で、国際結婚夫婦(夫・妻いずれかが外国籍)は約35万組。加えて夫婦ともに外国籍という夫婦は約20万組います。(平成27年 国勢調査より)
これらの夫婦の「別姓の割合」は残念ながら見つけることができませんでしたが、相当の夫婦別姓家族が存在するといえそうです。夫婦別姓で、かつ言葉や文化の違いを乗り越えて絆の深い家庭を築いている国際結婚の夫婦・家族はたくさんいますよね。「国際結婚は夫婦別姓でも良いが、日本人同士の夫婦が同姓が当たり前」と考えるのであれば、それは無意識のうちに、自分たちと違う価値観を排除しようとしている表れではないでしょうか。
2.事実婚の夫婦とその子ども
日本人同士の結婚では夫婦別姓が認められていないので、夫婦ともに改姓を望まない場合は事実婚となります。事実婚で子どもがいる場合は夫婦別姓・親子別姓となります。
事実婚夫婦の正確な統計は無く、件数は不明ですが、当メンバーにも事実婚を選択しながら、子どもを育てている人が複数います。
尚、事実婚の場合子どもは原則として母の名字となりますが、一時的に婚姻届を提出する等の方法で、父の名字にすることも可能です。
3.親が離婚・再婚している子ども
「親が離婚をし、親権者となった方の親は結婚前の旧姓に戻したが、子どもは元の姓のまま。」という場合、あるいは「親が再婚をし改姓したが、子どもは元の姓のまま。」という選択をした場合、親子別姓になります。
親権者と子どもの姓は一致する、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「親権」と「戸籍」「名字」は別問題なんです。
子どもにも「親が離婚・再婚をしても、無理に名字を変えたくない」という思いを持つことは当然ありえます。それを親が考慮した結果、親子で別姓となる子どもは多数います。2018年の1年間で、「未成年・未婚の子どもがいる夫婦」の離婚件数は約12万件。「親が離婚した未成年の子の数」は約21万人でした。
また、「夫妻とも再婚又はどちらか一方が再婚」の結婚件数は約15万7千件で、ここ10年間で毎年婚姻全件に対して26%前後を占めています。(いずれも平成30年 人口動態統計より)
これらのうち、子どもの改姓有無の件数は不明ですが、「親子別姓になっている」子どもは相当数いるものと思われます。
4.結婚して夫婦同姓だが、改姓した方が”通称”として旧姓を使っている夫婦
これも、広義の夫婦別姓家庭といえます。例えば、改姓した方の親が旧姓を通称として使用しており、仕事・地域活動などのコミュ ニティに子どもも頻繁にかかわっているとします。子どもが小さなうちは旧姓で呼ばれる親を見て「親の名字は○○(旧姓)なんだ」と思い込んでいるケースも多いです。
当事者が「別姓でも絆は変わらない」と証言 勝手に「かわいそう」と決めつけないで!
今まで見てきたように、多くの夫婦別姓・親子別姓となっている家庭が存在しますが、即、子供はかわいそうなのでしょうか?
多くの子ども達が「夫婦別姓でも親子の絆は変わらない」「夫婦別姓が当たり前と思って生きてきた」と多くの夫婦・子どもが証言しています。(※2)
その一方、「『夫婦別姓だと子どもはかわいそう』という考えがあることを知って傷ついた」という子どもがいます。(※3)
「かわいそう」という主観的な考えを根拠無く堂々と発言することは、多くの子どもを傷つけることになります。「夫婦同姓か別姓か」という選択のほかにも、両親の働き方・居住地等々、それぞれの家庭で話し合って決めるべきことはたくさんあるはずです。それを一方的に押し付けるのはおかしいのではないでしょうか?
もし子どもが疑問を持ったら、どう説明するかもそれぞれの家庭次第。もちろん、「当たり前だから」と疑問を持たない子どももいるでしょう。選択的夫婦別姓が認められれば、尚更ですね。また、姓に限らず、あらゆる面で多様性を認め、子どもが「周囲と違う」ことで悩むことのない社会を作っていくのが大人の責務だと思います。
「まだ納得できない点が・・」「他にも疑問が出てきた」そんな方は、全55件の疑問にお答えした選択的夫婦別姓に関するQ&Aをぜひ、ご覧ください!
「夫婦別姓で結婚したい」というそれぞれの事情や思いを尊重してくださる方が、一人でも増えることを願っています。
※1 夫婦別姓で「犯罪増える」 愛媛県議発言、議会は問題にせず 批判相次ぐ
https://mainichi.jp/articles/20200317/k00/00m/040/298000c
※2 親が夫婦別姓/親子別姓だと「かわいそう?」子どもたちのリアルな声
https://note.com/nana77rey1/n/n2d3305dd04a3
※3 選択的夫婦別姓が必要なこれだけの理由 より
「別姓に反対する人たちの“子どもがかわいそう”という意見にはショックを受けました。私の家族は仲がいいと思うし、親が別姓だからと嫌な思いをしたこともありません」
https://www.jprime.jp/articles/-/17436?page=2
文:S
投稿:担当Y