「一番の悩みは海外で自分の名前を使えないということです」 法律婚をした研究職M.Mさんが抱える悩み

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選択的夫婦別姓・全国陳情アクションには様々なメンバーが集まります。集まる理由は様々ですが、夫婦それぞれの名前で法律婚をしたいと思う気持ちは皆同じです。今回はメンバーのM.Mさんに「自身の仕事と名前にまつわる悩み」についてお話を伺いました。

海外で自分の名前を使えない

とある研究職の者です。私は結婚に伴って改姓しました。

夫婦別姓が選べないために困っていることは多くありますが、一番の悩みは海外で自分の名前を使えないということです。私と夫は海外で働いていた経験があり、将来また国外の機関で働くことを視野に入れています。

しかし、ビザは戸籍名(パスポート名)でしか発行されないため、自分の名前で働くことができません。海外で通称名を利用すると、こちらの記事で紹介されているように「なりすまし」を疑われてしまう可能性があります。

国境を越えられない事実婚・通称使用国境を越えられない事実婚・通称使用日本ですすめられようとしている「旧姓の通称使用」。一見、問題を解決するように見えるこの方法も、海外で暮らす上では様々な問題

これらの問題を全て解決する方法は、現時点では夫に名字を変えてもらうしかありません。しかし、それは夫が望まないことであり、従って私も望みません

改姓に伴う業績の断絶

研究者にとって、名前は生命線です。名前が変わることは、今までの蓄積を一度失うことに等しいです。

改姓に伴う業績の断絶は、就労ビザだけでなく様々な場面で起こり得ます。例えば、特許申請は戸籍名に限られています。そのため、改姓前後の特許はつながりを絶たれ、業績には異なる氏名が混在することになります。また、一部の免許や資格も戸籍名に限られています。

このように業績が切断されたとき、人によっては連続性をできるだけ保つため、論文著者名にミドルネームで旧姓を入れたり、ハイフンで姓を連結する人もいるでしょう。

しかし、その方法は結局のところ検索性が下がることに変わりありません。

例えば、Taro Yamada さんの論文を読んで、彼の他の論文にも興味を持った場合を考えてみてください。PubMed*1の検索では “Takahashi TY” さんや “Yamada-Takahashi T” さんの論文は出てきません。Googleの検索結果でこれらが表示されたとしても、著者が同一人物だと気づかない可能性があります。「ORCID*2に登録していれば大丈夫」という意見が出ることもありますが、著者が改姓した可能性を考えて毎回ORCIDを見てもらえるとは限りません。

日本以外の国では夫婦別姓が選べます。そのため、他国の研究者達に、名前を変更したことを想定してもらうことは更に難しいです。

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旧姓併記やミドルネームによって個人のプライバシーがさらされることも

また、著者名の変更はプライバシーにも関わります。
私は、尊敬する研究者の先輩(男性)に結婚することを話した際、「結婚しても論文著者名にミドルネームとかは入れない方がいいよ。そういう人を見かけることがあるけど、名前が元に戻ったりすると分かっちゃうからね」と言われた事があります。

それは完全に、私の今後のキャリアを思った上での親身なアドバイスでした。しかし、名も知らない女性研究者のことを思わずにはいられませんでした。業績から私生活を知られることは、彼女の本意ではなかったと思うのです。

未婚/結婚/離婚/再婚というプライベートにおける出来事が、プロフェッショナルとしての経歴に望まずとも反映されてしまうこと、これは人権の侵害です。現状多くの男性が持っている自由 —自分の名前で生きる自由— は、結婚した二人で取り合うものではありません。双方が選べるべきものです。

これからの時代にむけて

旧姓の利用をどれだけ拡大しても、パスポートが戸籍名に基づく以上、その使用範囲は国内に限られます。これからの時代、国境を越えて仕事することは更に増えていくでしょう。ローカルルールを変えても根本的な解決には至りません。

夫婦同姓に加えて夫婦別姓という選択肢が、結婚する二人に増えますように。切に願っています。


文:M.M
投稿:担当Y